「いつまで出ていくつもり?」

日向さんを送り車を走らせているとやっと言葉を交わした。

「…とりあえずは日向さんのお母さんの気が散るまでですかね」

「日向を連れていくつもりはないんだね」

「…はい。だから私がいない間、日向さんをお願いします」

「仮にも恋敵に任せるとか…」

呆れるように首を傾げる。

「正面からぶつかってきたさきさんだから任せることが出来るんです。…それにもし日向さんのお母さんが諦めても、多分私は戻ってくるとこはないと思います」

「あんた何言ってんの!?」

座席に手をかけて声を張り上げた。

「自分が何を言っているのかわかっています。でもこのタイミングで出て行くということは肯定しているようなもの。帰ってきたところで私の居場所はないんです」

ハンドルを握る手に力がこもる。

「…日向さんのことは本当に大好きです。手放したくない。でもこれ以上私といると迷惑がかかる。私は日向さんの負担にはなりたくないんです」

迷惑がかかるなら側から離れるしかない。この町ではまだ私たちの関係は受け入れられない。これが今私に出来る最善の選択。

「日向にはなんて説明するの?」

「それは…」

理由を考えていなかったため言葉に詰まった。

「…とりあえず来週には出て行きます。知り合いに頼んで今のアパートの契約を取り消して貰えるので早くても来週の水曜日ですね」

「早すぎない? それじゃああと5日しかないじゃん」

「…ズルズルと残ってたら手放したく無い気持ちがもっと大きくなりそうなので」

駐車場に車を停め座席にもたれ掛かった。

「…ちゃんと日向に伝えてからにしなよ」

彼女はそう言うと車を降りて帰った。


私だって一緒に居たい。本気で好きになった人だもん。誰よりも愛してる。てもお互い不幸になるより、私一人が消えて全て収まるならそれが一番日向さんに負担が掛からないはず。


誰もいない家に帰り、知り合いに部屋の解約の連絡を入れてベッドに寝転んだ。片手に携帯を持ち連絡を入れるべきか悩みつつ眠りについた。

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