星と月
暫くして泣き止むのを待ってから近くの自動販売機で飲み物を買い、ベンチに移動した。
「…なんで雪はそんなに優しくしてくれるの?」
落ち着いたあなたは隣に座り私の肩に頭を乗せた。
「優しくなんてないですよ。今回のことは私も悪かったですし、ひゅうさんには笑っていて欲しいし」
「でも雪からこうして欲しいとか私に怒ったりは1回もないでしょ?」
根っからの尽くすタイプなので怒ろうともお願いしようとも思わない。それに幼い頃から人の負担になるのを極度に嫌っていた。でもあなたを見ていると少しはわがままや弱音を吐いてもいいのだろうかと思う事が増えてきた。
「…人にお願いするのも、怒ったりするのも全部怖いんです。負担になるかもしれない。逆に怒られるかもしれない。離れていくかもしれない。そう思えて仕方ないんです」
精一杯笑って伝える。泣きたくはなかった。どんなに辛くても泣いたら負けだと思っていたから。
あなたは私の手を握り、
「たまにはわがまま言ってほしいな。雪に必要とされてると思えるから」と呟いた。
ゆっくり立ち上がりあなたの前に立った。
「…じゃあ一つだけお願いしてもいいですか?」
ポケットの中から小さな箱を取り出して渡した。
「ちょっと遅くなったんですけど、これお揃いで付けてくれませんか?」
箱を開けると中にはショッピングセンターで買った月と星のネックレス。あなたは驚いた表情を見せ、すぐに笑顔になった。
「…すごく可愛い」
「指輪とかも考えたんですけど、さすがに目立つかなって、私基本襟のある服着るんでこれなら何も言われないと思って」
ネックレスを暫く見つめ、片方を私の方に差し出した。
「こっちがいい つけてくれる?」
あなたが選ぶとだろうと思っていた青色の星のネックレス。後ろに周り言う通りに付けると満悦した様子で振り返り、どう?と聞いてきた。
「…似合ってます。想像通り」
もう片方のネックレスを取り、首に回すと
「私が付ける」
私の手からネックレスを奪い後ろに周りネックレスを付けた。
「これでお揃いだね」
後ろから私を抱き締めた。
あなたの温もりが伝わってくる。優しい暖かさ。出来ることならこの温もりをいつまでも感じていたい。
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