距離
雨の音で目が覚めた。あれから何時間経ったのだろうか。薬が効いたようで体の怠さは無くなっていた。携帯の電源を付け、時計を見ると日付が変わってお昼前を表示している。そんなに寝ていたのか。自分の睡眠時間に驚きながらも体を起こし少しだけ窓を開けた。かなり雨が降っている。テレビをつけると天気予報が流れていた。
時間差で携帯の通知音が鳴った。あなたからだ。
-髪留めはまた取りに行くから、体調良くなったらまた連絡ちょうだい-
予想以上に淡々としたものだった。何故だろうか、特に心当たりはないのだけれど。送られてきたのは昨日私が連絡した直後だった。とりあえず良くなったら旨を伝えよう。
-熱下がって調子良くなってきました-
返事が帰ってくる気はしなかったが一応連絡を入れた。
寝過ぎた為か首筋が痛い。体調も良くなった事だし少し買い物に出かける事にした。日用品と食材、そういえば3日後はあなたの誕生日だ。プレゼントも買おう。そう思い着替えて出掛けた。
ショッピングセンターはいつものように沢山の人で賑わっていた。買い物を済ませてあなたへのプレゼントを探した。あなたの好きなアクセサリーショップの前で足を止め、あなたの好きそうな青色のネックレスが目に入った。手に取ると光の当たり具合で星が光る物だった。隣には月のネックレス。星と対になっていた。私はこれだと、感じ2つを持ってレジに向かった。買い物を終え、荷物を置きに行くと、駐車場の奥に見覚えのある姿を見つけた。ひゅうさんだ。私は声を掛けようとするが、隣にあの人、さきさんをいるのを見つけ、私は喉まで出かかった言葉を飲み込んだ。連絡の返事返ってきてないのに何故だろう。でもあなたの友達関係にまで口出すつもりは無い。声を掛けるこが怖くなり私は早足でショッピングセンターに戻った。
頭の中には何故 どうして そんな言葉だけが支配していた。心を落ち着かせるためショッピングセンター内の珈琲店に入った。ひゅうさんは何故連絡をくれなかったのだろう。私が何かをしてしまったのだろうか。考えれば考えるほど分からなくなり頭を抱えた。手元のプレゼントを見てどうするべきかわからずに時間だけが過ぎていった。
気付けば時計は夕方を示していた。これ以上考えても何も出ない。そろそろ帰ろう。プレゼントを持ち自宅に帰った。
家に帰ると荷物を玄関に置きベッドに倒れ込んだ。私はどうすればいいのだろうか。頭の中は駐車場で見た光景の事でいっぱいになっていた。見たことを伝えるべきか。どの行動が正解なのか自分では分からなくなっていた。
昔の私ならこんなに考えることは無かった。それだけあなたの事が大切で些細な事でも悩んでしまうのだろう。そんな考えも浮かぶ中、頭の中がいっぱいになった私は通知のない携帯画面にちらりと目をやり、そのまま眠りにつくことにした。
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