あなたが終わるまでの間気不味い雰囲気の中私は携帯を弄って早く終わらないかなと考えていた。沈黙を破ったのは彼女だった。


「ユキちゃんってさ 日向の事好きなの?」


唐突にそして直球な質問に驚いた。


「…大好きですよ? 凄くいい人だし面白いし」

そうじゃなくて、と彼女は私の言葉を遮った。


「あの子の事恋愛感情で好きなのかって聞いてるんだけど」


そう聞かれると思っていた。

あなたの周りは直球で聞く人が多いんだなと考えていると彼女は続けて

「そうであっても違っても、私はあの子事を今までずっと見てきた。ユキちゃんが知らない悩みとかも私が今まで相談に乗ってきた。」

彼女は淡々と冷たく話し続ける。

「…つまり何が言いたいんですか?」

何となく言われることは分かっていたが会話の流れで聞いた。


「あの子は私が居ないとダメなの。あの子の隣に居るのは私。必要とされるのも私。あなたにあの子を渡すつもりは無いから。」


まさに宣戦布告。

威圧感のある声に目付き。一瞬怖気付きそうになった。


このタイミングで、実は付き合ってます。とも言えず

「私は…」

どう反論しようか悩んでいたが、


「2人でなんの話してるの?」

と、いつの間にか仕事を終えたあなたが私達の間に入ってきた。

助かったと思いつつ、話の内容を聞かれていないかと冷や冷やした。


「…二人の秘密の話」

彼女はニヤリと笑いながらあなたの頭に手を乗せ、髪をくしゃくしゃと撫でた。


「なにそれー。仲間はずれかよー。」

無邪気な笑顔を彼女に向けて楽しそうに話すあなたから私は目を逸らした。


「…私ちょっと用事思い出したんでやっぱり帰りますね。」

返事を聞かずにソファから立ち上がり荷物を持って帰ろうとした。

あなたは驚いた様子で私の名前を呼んでいたが私は聞こえない振りをして駐車場に向かった。


「…雪になんか言ったの?」

「別に。私の日向を取らないでって言っただけ。」

「そういうのやめてっていっつも言ってるじゃん。さきは私にとって友達として大事な存在なの。それ以上にはなるつもりは無いから。」

「…あの子ならそれ以上になれるの?」

「…雪はさきと違って私を支えてくれる。私を置いて行ったりしない。」

「…あの子と付き合ってるの?」

「それはさきには関係ない。今日はもう帰って。」

「…わかった。でも私は日向のこと諦めないから。」



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