気持ちと現実




「雪って私のこと恋愛で好きなの?」


一瞬 何を言っているのか理解出来ずに私は足を止めた。


「…いきなりどうしたんですか?」

「雪は私のこと気に入ってくれてるって、いっつも言ってたから友達にその事 話したの。そしたらその子はたぶん私のこと恋愛で好きなんじゃないかって言うからどうなのかなって思って。」


私は悩んだ。

このまま伝えるべきか。

それとも嘘をついてあくまでお気に入りということを貫くべきか。

しかしお酒の影響であまり頭が回らずこの場に最適な言葉を探すことが出来なかった。


「…もし私が恋愛で好きだとしたらひゅうさんはどうします?」

「えっ…」

精一杯頭を働かせて、少しカマをかけて直ぐに冗談だと伝えるつもりだった。

でもそれをあなたは予想外の言葉で返した。


「…そうだったら嬉しいかもしれない」


「…本気で言ってます? 年下に、同性に恋愛で好きって言われてるんですよ?しかも同じ職場に入ってきた人間に」

私は拒絶されるとしか思っていなかったため、あなたの言葉を信じず冗談だと訂正させようと必死だった。


「確かに同性だし、後輩だし、わざわざ同じ職場に来るようなしつこい人かもしれないけど、それ以上に雪はいい子だって思うし、いっつも私を楽しませようと必死に頑張ってる姿が私は嬉しいって思うし好きだから、雪なら受け入れれる。」


「それって…」

この時私は自分で墓穴を掘っていることに気付いた。


「それにそんなに必死に否定させようとするって事はあながち間違いではないんでしょ?」


あなたの言葉に返す言葉もなく、私はただ黙っていた。


「ねぇ雪。 雪の言葉でちゃんと教えて。」



「私は…」

拳を握りしめ声を押し出して答えた


「私は…ひゅうさんが好きです。多分恋愛で。ひゅうさんの特別になりたいし1番になりたい。でも私はひゅうさんの1番にはなれないと思うから、…せめてあなたの隣に居させてください。」


精一杯の気持ちだった。

1番になれないと分かってるけどあなたが好きだから。

嘘偽りのない気持ちを伝えた。


「…私は不器用だし、すぐに雪の感情に気付いてあげられないかもだけど、…私でよければ隣にいて。」


「…ありがとうございます。」

嬉し涙を堪えながら電話越しのあなたに感謝を伝え気を紛らわすように歩き出した。


「…もしかして泣いてる?」

「泣きそう。泣きそうだし今すぐひゅうさんに会いたい。」

「今から来てくれてもいいよ」

「今行ったらお酒のせいで夢だって思いそうだから我慢します。」

「そっか。わかった。嘘だって思われたらいやだから私も我慢するね。」

優しい声に安心感を抱いた。


少し話をしている間に家につき

家族を起こさないように部屋に入りそのままベットに倒れこんだ。

「ひゅうさんこのまま電話繋いでていいですか?今ならすぐに眠れそう」

「最近眠れてない?」

「仕事掛け持ちしてたら思った以上に疲れてるみたいで、なかなか眠れないんです。」

「じゃあ雪寝るまでこのまま繋いでるね」

「ありがとうございます」


私はこの日初めて人に想われるという幸せを感じながら眠ることができた。

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