第4話 給料
神様となってからはや1ヶ月。
神様となった翌日、つまり、誕生日からずっと調子が良い。違う世界の神様をやっているわけだが、この世界も誕生日に生まれ変わって今までとは違う世界で生きているような感覚。
仕事は順調。上司は小言も言えなくなっている。
体調は快調。仕事ができているために、時間ができて、自炊が増えた。睡眠時間も増えた。ストレスは減った。これで、体調が良くならなかったら、ちまたで言われている健康法は全部嘘ってやつだ。
恋愛は……単調。0から全く動きなし。さすがにそんなものはないわな。
バイトは恐竜の時代。
やはり、恐竜は何歳になってもロマンであり続ける。間近でティラノサウルスもどきを見たときはさすがの迫力だった。都合がいいことに生き物から見られることはないし、触れられることもない。
この点は、グロリアに確認した。
「世界のものから触れられることはありません。神様というのは概念的な存在なので、知覚することはできないのです。例えると、この世界で知覚できるのは3次元までですが、神様は4次元の存在なので知覚できないのです」
分かったような分からないようなそんな説明だが、要するに向こうの世界の動物はこちらを認識できないし、触れることもできないってことだ。
進化の速度が遅いという声も聞こえそうだが、恐竜はロマンなのだ。ゆっくり観賞して何が悪い。
さて、バイトの給料日。
いくら机の上に出現しているか。家に帰って、真っ先に確認したが何もない。
? どういうことだ? 今日で間違いないはずだ。まさかの支給の遅れか? 意外といい加減なんだな。
ということで、グロリアに連絡をとる。
そうは言っても、実際はグロリアのことを考えるだけ。グロリアが忙しいときは後から連絡が来るし、暇なときは連絡できる。機器のいらない携帯電話みたいなもんだ。ただ、こっちからはグロリアが応答するまで待たなくてはならないが、グロリアからはこっちが応答しなくても声が届く。
「はい。なんですか?」
グロリアの声だけが聞こえる。今回は、連絡できる状態だったようだ。
「給料日なのに、給料ないんだけど」
「えっと、確認しますね。……って、今、恐竜がいる程度? バイト代が出てこない? なに当たり前のこと言ってるんですか! これでバイト代なんて出るわけないじゃないですか!」
逆に怒られた。
どういうことだ?
「バイト料は神様への感謝の総量で決まるって言ったでしょ」
確かにそうだけど……
「じゃあ、今は感謝がないってことか?」
「あったり前でしょ。大体、爬虫類に、神とかそういう概念自体があると思う? それでバイト代とか出るわけないって分からないかなぁ」
ひどい言われようだ。
「じゃあ、人間が出てこないとだめってことか?」
「そう。お金が欲しいなら、せめて原人ぐらいまでは進化させないと。神って見えてるもの以外の高次元のものがいるっていうことの認識なんだから」
……仕方ないといえば仕方ない。確かに、神への感謝ってことだと、神の概念が生まれないことにはバイト代は0。
これは、えらいことだ。
ロマンとか言ってる場合じゃないな。
やはり、お金は欲しい。
「グロリア、分かった。頑張るよ」
「ちゃんとして下さいよ。私の査定にも響くんだから」
そう言い残して、グロリアは連絡を切った。
こうなったら、急ピッチで進化させてやる。
いい加減、恐竜の時代も長くなっているはず。鳥を誕生させてみたら、俺のイメージする鳥がしっかり出てきた。
鳥のような特徴を持つ恐竜がちょっといたので、やってみたらできた。
……もしかしたら、ミッシングリンクってやつはこうやってできていくのかもな。
俺たちが住んでいる世界にだって、本来、連続性が必要な部分に非連続性が観察される場合がある。それがミッシングリンク。
神様の気まぐれでしかないってことか。
まだまだ進化をさせることが必要だが、一気に進めることにする。
給料日から3日。
時間の針を加速させて加速させて加速させた。
原始的な哺乳類は恐竜の時代にすでに姿を現していたし、やや進化したようなほ乳類もでている。しかし、そこからがなかなか進化しない。
簡単に言えば、猿のような動物を誕生させようと思ってもできないのだ。
なぜだ。
人間を誕生させなければ、バイト代はもらえないが、とにもかくにも猿が出てこないと話にならない。
いろいろな生物が進化の過程で生まれ、消えていく。
“G”が出ることもあったが、容赦なく滅する。俺の世界には存在してはならない。実際にそれなりの期間はいなくなるのだが、それなりに期間が経つと出てくる。
何回滅しても何故かまた出てくるのだから、やっぱり“G”なんだな。
しかし、そうしたいろいろな生物が出てきても、猿は出てこないし、誕生させることもできない。進化値がたりてないのか? 時間ならたっぷりかけた。時間以外の要因なのか? 分からないが、とにかく進めるしかない。
次の給料日には一万ぐらいはもらいたいからな。
とりあえず、猿の誕生だけは見逃さないように頑張ってみよう。
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