〜佐々木大佐現れる〜
「このままじゃ追いつかないな。強化術式二乗!」
星雪の足元に鬼の紋章が現れ、地面を蹴ると爆発的加速をみせる。
「おい!危ないぞ!気を付けろ!」
危うく道を走る馬車に接触しかける。
「すいません! ……やっぱりこのスピードだと制御が効かないな……」
星雪はようやく神谷に追いつく。
「ほらほらほっしー!スピードあげるよ!」
涼花は、さらに速度を上げ、第五師団駐屯地の門の中に消えていった。
「おいおい、それはないでしょう……」
星雪は呆れ顔をする。
涼花に遅れて駐屯地の門をくぐると番兵が星雪の行く手を遮った。
「身分証明書を見せてもらおう」
番兵は、その威厳のこもった低い声で星雪に要求し、手を前に出す。
星雪は「わかりました」とだけ答え、腰のポーチから梶の葉の刺繍が入った手帳を差し出す。兵師手帳というものだ。
番兵は、手帳を広げ、星雪の顔を確認する。
「新兵の者か、入ってよし!」
番兵は、星雪に手帳を返し、まるでからくり人形の様な動きで横に直立不動の姿勢で立ち、敬礼をする。
星雪も敬礼を返し先へと進む。
星雪が駐屯地内の一際大きな擬洋風建築の兵舎に入ると、二階へと続く大きな階段が目に入る。
その前に涼花と周造、そして、赤い刀を腰に差し、黒をベースとした中に血を思わせるような赤で縁取りされ、黒がより際立つ軍服を着た男がいた。
男は鋭い目と軍服の上からでもわかるような鍛え上げられた体つきをしている。
腕章と右肩から右胸にかけて吊るされた二本の赤い紐からこの人物が参謀階級であることが見て取れる。
「よかった! 間に合ったね!」
涼花が腰で手を組みこちらを覗き込むようにする。
「置いてきておいて、よく言うな」
周造が腕を組みながらやれやれというポーズをする。
「おーおー上官を待たせるとはいい度胸だな。星雪よ〜」
男はチャラけた態度で星雪に迫る。
「す、すいません!
星雪は苦笑いしながら、手をまるで壁を作るように前に出して謝る。
「え! ほっしー知り合いなの⁉︎」
涼花は、驚きの顔をする。
「まぁね……親の関係で……」
「時間がもったいない、さっさと自己紹介を済ませるぞー名前と階級、そして得意な戦闘スタイルを言ってくれ」
剣二は面倒くさそうに懐中時計を取り出し、時間を見る。
「じゃあ、うちから! うちは
「好きなものを言えとは言ってねーぞ。次!」
剣二は周造の方を指差す。
「自分は
「お〜千葉の次男坊か大きくなったな」
「私は……」
「おっと、星雪はいいぞ。知ってるからな。よ〜し、自己紹介も済んだところだし先に進むぞ、ついてこいガキども」
剣二は、星雪の言葉を遮り二階への階段を登っていく。
「待ってください! あなたの自己紹介がまだです」
周造が剣二の後を追う。
「あ〜そうだなー星雪、俺の紹介をしといてくれ」
「剣二さんそれは……」
「いいだろ〜星雪。お前、自己紹介してねーだろ?」
「わかりましたよ……」
星雪は折れ、あきらめた様な声を出す
「ほっしー、聞かせてくれあの人のことを」
「うちも知りたい!」
周造と涼花が目を輝かせながら星雪を取り囲む。
「う、うん。あの人は、
2人の興味津々な様子に少し戸惑いながら話す。
「ほー剣術かー 1度手合わせをお願いしたいな」
周造は、刀を持っている風を装い、素振りをする。
「あの人の剣術は、正直言って剣術と言っていいか、わからないだよね」
「どういうこと?」
涼花が不思議そうな顔をする。
「おい! ガキども遅いぞ!」
突然、階段の上の方から剣二の声が響く。
「まぁ、それはまた今度……」
そう言って星雪は、階段を駆け上がる。
「おい! ほっしー! 歯切れが悪いぜ!」
「そうだよ! そんなのずるいよ!」
周造と涼花は、星雪の後を追って階段を二階へと急ぐ。
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