〜神の力〜
「あつっ!」
涼花は赤くそして鮮やかに燃える男の炎の熱気に圧倒され、たじろぐ。
「この燃え盛る炎の前では、おどれの氷など無意味じゃ」
男が地面をけって再び接近してくる。
接近戦は不利と判断した涼花は強化術式をかけ、森の奥に向かおうとする。
「距離をとるか。じゃが、逃げ切れるか?」
男も、強化術式を使用し圧倒的加速をみせ、涼花に容易に追いつく
「逝ねや。」
「く……」
男が追いつき剣を振り下ろそうとする。
その無機質な剣の鈍い光を目の前にして涼花は初めて死を覚悟する。
その刹那、金色に輝く光の球が焼け焦げた木の陰から現れ、男に命中し吹き飛ばす。
「大丈夫?神谷」
木の後ろから撤退したはずの星雪が姿を現す。
その右手には男を吹き飛ばした金色に輝く光の玉が握られていた。
その光は、涼花にとって初めて見る日の出の光のように見えた。
「ほっしー……。なんで!逃げてって言ったじゃん!それに義孝たちはどうしたのよ!」
「義孝たちは自分そっくりの式神をつくってごまかしたよ。助けを求めに行ってくれてるはず!」
星雪は右手に持っていた光の玉を男が飛んで行った方向へ投げつける。
「でも、なんでよ!ほっしーが戻ってきたら本末転倒じゃない!ばあやとの約束だってあるのに……」
「それは俺が死んだらの話でしょ。ほんと神谷は心配性だね」
いつものお返しと言わんばかりのニヤけた顔をする。
「死ななかったらって、この状況がわかってるの?」
涼花が食ってかかる
「うん、わかってるつもり」
「だったら……」
「この程度の敵を倒せないでどうしてひいじいちゃんを超えることができるんだ? 第一、俺と神谷が組めば何とかなる!今までだってそうだったろ?」
星雪は、不敵な笑みを浮かべながら懐から術式が書いてある札を3枚取り出し戦闘に備える。
「この対象を吹っ飛ばすだけの術“
男がゆっくりと燃える木々の間から現れる。
「嫌にきまってるだろ!」
「なあに、監視の目を気にすることはない。監視官はわしが全員殺したし、この周辺には結界を張っといたけぇ、誰も見てない。わしらと一緒に創造神を復活させんか?」
「創造神?」
「ついてくれば教えてやる。じゃが、ついてこんなら四股を切り落としても連れていくけぇ、覚悟しんさい。」
男が剣を振ると無数の炎の球が剣から発生し打ち出され、星雪たちに蜂のように襲い掛かる。
「やっぱりこれに頼るしかないか……強化障壁!」
星雪が叫ぶと、彼の目の前に鬼の紋章が描かれたシールドが現れ攻撃を防ぐ
(強化術式と対をなすもう一つの基本術式、障壁術式に強化術式を合成したか、普通ありえんことじゃ。面白い!)
「いでよ!式神!」
星雪がそう言いながら持っていた紙を宙に投げると3体の刀を持った鬼が現れ、男に向かっていく
「式神ごときでわしを倒せると思うか!」
男は次々と式神を斬り倒し、最後の1体を真っ二つに斬り裂いたその時、最後の式神から煙幕が発生する。
あたりは煙幕に包まれ見通しが効かなくなる。
「こしゃくな!」
男が剣を振ると煙幕は四散する。その勢いのまま煙の中から現れた星雪に迫り、一文字に切り付ける。
星雪は大根のように真っ二つになるが、次の瞬間、お札に変わったかと思うとそのお札から紅色のツタのようなもの現れ、男に絡みつき、封印術式が作動する。
(これも式神だと!煙幕に紛れて入れ替わったか。なるほど4体の式神を作りさらに術式まで組み込むとは、これが呪術の神の力かのぉ!)
「仕方ない。奥の手じゃ!“カグツチ”」
すると男から発せられる炎がさらに勢いをまし、鎧のように体をまとい、封印術式を振り払う。その姿は荒ぶる神そのものだった。
「今だ!神谷!」
木々の間から星雪が現れ叫ぶ!
「うん! 原子振動、増振!」
涼花は手に文字が書かれたお札を握り、力を込めると、男をまとっていた炎が凶変し大蛇のように男に襲いかかる。その様子は、まるで神々の怒りに触れたかのようだった。
「何じゃ!何をしたんじゃ!」
「うちがお前の体と、周りの空気の粒子を振動させ、温度をあげて、お前の炎の支配限界を超えさせた」
涼花が息を切らしながら答える
「おどれは水支配系能力じゃないんか!?それに触れとかんといけんはずじゃ!」
「うちの支配対象は原子。物は振動すれば熱を出して、振動が小さくなれば凍り付く。ほら!寒いとき体を温めようと勝手に体がブルブルするでしょ?触れてなくても術を使えたのは……」
「式神に封印術式ともう1つ、空間系術式も組み込んどいた、だからお前に触れていなくても対をなすお札を持っていれば発動できた。お前はもう終わりだ」
星雪が涼花の話に割って入り疲労感を隠せない声で語る。
「ちょっと!ほっしー!うちの見せ場を取らないでよ!」
涼花はふくれっ面をする。
「いや〜ごめんごめん!」
男は激しい戦闘の後とは思えない2人の様子を目の当たりにし、なぜ自分が敗れたのか悟る。
「ふふふふ、貴様ら!これで終わりと思うなよ。神の末裔と得体のしれない力を持つもの、おどれらのその力と血は、おどれらを苦しめ続けるじゃろう!」
そう言いながら男は炎とともに消え去った。
その最期はまるで木の葉の最後の一枚が燃え尽きたかの様で星雪にはあまりにも呆気なく見えた。
「終わったのか……あれ?なんか視界が……」
星雪は、急に目の前が暗くなり前のめりに倒れこむ。
「ほっしー!!」
涼花が星雪に駆け寄る。するとそこに黒い軍服をきた一団が林の中から現れる。
「警務部隊……」
「我々は
20代前半くらいの若い男が話しかける。
「わかりました……」
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