第17話 赤と白の運動会、開幕
それから三日後、遂に、インスタントオリンピックが開かれた!
私の知っている限り、一番規模の小さな会場で、一番すごい熱気だった。
会場は赤白それぞれの旗や服を着た有翼人とドラゴンでぎっしりと埋め尽くされた。応援の人達も分かれないように配置したけど、まだどこかぎこちない。まあ、まだこれからこれから。
クレイとギルディアは会場の一段と高い白と赤の特等席に隣り合って座っていた。本当はお互いかなり嫌がっているのだが、国民の手前そんな態度を見せられない。お互い顔をひくつかせつつも、見た目は和やかに座っている。私達は黄金国招待者とだけ紹介され、クレイの左隣に座った。
こんな小さな運動会でも、きっちり入場行進は行った。勇壮なブラスバンドの生演奏と共に紅白両組の選手団が入ってくる。なかなかしっかり行進できてるじゃない。赤と白の応援団が歓声を上げる。
「わが赤の国の民よ、白の国との協力を忘れず全力を尽くして欲しい」
「わが白の国の民よ、赤の国との礼節を忘れぬ大会にいたそう」
ギルディアとクレイの開会宣言で、紅白大運動会は始まった。
まずは玉入れから。ドラゴンと有翼人にしっかり協力し合って欲しいのだけれど、まだ何かぎこちない。自分のチームの同じ種族同士で自然と集まって玉入れしている。
「何となくよそよそしいですねえ」
バドが心配そうに見守る。
いやいや、これはまだ序盤だもん。これからこれから。
お次は綱引き。一緒に力を合わせるのだけれど、息が合わないのか、力のあるドラゴンに有翼人が引きずられてる感じ。見れば、紅白両チームともそんな感じだから、混合と言うより、紅白のドラゴン対ドラゴンと言う雰囲気。
「子供じゃないのですから息を合わせないと」ララがため息をつく。
ほんと、全くその通りだよ。でも、まだまだ!
騎馬戦になって、少し様子が変わってきた。これは騎馬に一匹のドラゴン、上にはちまきをした有翼人が一人乗ると言う正にコミュニケーションが必要な競技だ。紅白に分かれた各十組の騎馬がずらりと縦に並ぶと、さすがに迫力がある。
会場がごくりと見守った。合図と共に、敵のドラゴン同士ががっつりとぶつかり合う。しかし、上に乗っている有翼人達は及び腰だ。敵でも同じ有翼人同士戦い難い、と言った雰囲気で、お互い躊躇していて、いまいち迫力がない。そのうち応援団のドラゴン達や味方である騎馬のドラゴンにまで文句を言われる始末だ。
「ふん。勉強ばかりでは弱々しくて話にならんの」
ギルディアがふん、と鼻を鳴らした。
「こちらは誰かと違って繊細なのだ」
クレイが冷徹に答える。やれやれ。
しかし情勢は変わってきた。何度かするうちに、有翼人同士に遠慮がなくなり相手のはちまきを取れるようになってきた。そうすると、一緒に組んでいるドラゴンとも自然に力を合わせ、有翼人の指示でドラゴンが動いたり、劣勢の有翼人にドラゴンが叱咤激励している場面が見られるようになった。見ている応援団も最後には大歓声を送り、なかなか良い結果となって競技は終了した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます