第11話 何気ない朝

蝉の声で目覚める季節になった。開けっ放しの窓と首をゆっくりと振り続ける扇風機。

じっとりと汗ばんだシャツを脱ぎ捨て、朝シャンをしに風呂場へ向かう。

さっぱりして脱衣場で制服に着替えていると突然ドアが開き「遅い」と幼馴染の顔が覗く。

「やーん、ひろくんのエッチ」

「お前はしずかちゃんか」

「ふふっ、ごめんて」

嘉は毎朝俺を迎えに来てくれる。

夏は暑くてすぐ起きるけど、冬なんかは嘉なしじゃ起きれない。人力アラームなんて言ったら絶対怒られる。今ふっと思いついただけで実際に言うつもりはないけど。

「朝ごはんは?」

「いーよ、お腹空いてないし」

「ダメ。夏バテで倒れるよ、コンビニ寄るぞ」

部屋から鞄を持ってきて靴を履く。外は火傷しそうな眩しさ。

「嘉さんや、今日は休んだほうが良さそうだね」

「檬架、今日水泳あるだろ」

俺よりも俺のクラスの時間割を覚えているんだ、さすが秀才クラス。

でもそうか、流石に今日もサボったら補講キツくなるか…。

「水着取って来る」

「よし。」

しょうがないよ、ウチの学校の体育補講まじでキツイんだから。俺は去年、一度死んでいる。

プール自体は涼しくなるからいいけど、疲れるんだよなぁ…やっぱ休みたい。

「じゃあ行くか、もうすぐバス来るからダッシュな」

「ええ〜〜そりゃないよ嘉」

「頑張れバスケ部」

「じゃあマネージャーみたく俺を応援してよ」

「馬鹿」

呆れたように笑う顔がちょっと好きとか、更に呆れられるかな。

でもやっぱり好きだし。夏は嫌いだけど、嘉がいればいいかなって思えるくらいには______

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