第8話 眼科医羽澄

白咲千冬目線


編矢紐学園の8年後くらいの設定です


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仕事でパソコンを使うことが増えたからか、最近視力が落ちてきた気がしたので、眼科に予約をした。日曜日、いつもより薄化粧をして向かった小嶋眼科には、幼馴染のお兄ちゃんがいた。

「えっ、ひろくん!?」

「あれ、千冬ちゃん〜、久しぶりだね」

羽澄嘉くんは兄の白咲檬架の幼馴染で、昔はお隣さんだった。今はお互い一人暮らしをして会う機会も減ったけど、変わらない様子にホッとする。

でも、まさかこんな薄化粧のときに会うなんて…。こんな風に会うならもっと気合い入れて服も選んだのに。

「今日は?コンタクトにするんだっけ?」

「そうなの。眼鏡でもいいかな〜と思ったんだけど」

ひろくんはふふっと笑う。

「そうだね、千冬ちゃんはコンタクトのがいいと思う。せっかく可愛いんだから」

昔から変わらない恥ずかしい台詞を天然に言ってしまうあたり、懐かしいな。

眼科医になったひろくんは、細身の体に白衣を着こなしてカルテに何かを書き込み始める。

ひろくんに最後に会ったのは3年前。

年末年始に帰省した時に一緒に初詣に行ったきりだ。それから私も仕事が忙しくなって実家にも帰ってなかった。

でもまさか、ひろくんがここで働いてるなんて思いもよらなかったな〜。

だからこうやって恥ずかしい姿を晒しているわけだけど。

「それじゃあまずは視力から測っていこうか」

「はーい」

「うん…やっぱり裸眼で日常生活はこのままだときついかな〜」

「だよね…」

「じゃ次は実際に診てくから、こっちの椅子に座って貰えるかな?」

「はーい」

移動して機械の上に顎を乗せて額をくっつける。

するとパッと部屋の明かりが消えて、

「はーい、真っ直ぐ前向いてー」

とひろくんから指示がでる。

「下向いてー」「上向いてー」

「向こうのシール見ててー」

それに私は黙って従う。カチカチと写真を撮る音が聞こえる。

ひろくんが瞼に触るたびに、アイシャドウがひろくんの指についてないか不安になる。

ほどなくして部屋の明かりがつき、

「はーいお疲れ様ー」

と声を掛けられる。

「問題ないね。あとは後ろのお姉さんが度にあったコンタクト選んでくれるからね」

「ありがとうございます」

私はちょっと大袈裟にお辞儀してみる。

ひろくんが笑う。

「はい、お大事に」

なんだか違う気がしたけれど、はい、と笑って答えた。

「ありがとうございましたー」

「どうもー」

コンタクトレンズを受け取って店を出ると、16時になるところだった。これから夕飯どうしよう。

せっかくだし外食してもいいけど、早く終わらせたい案件があるのを思い出してコンビニに寄ることにした。

せっかくの休みが潰れた気でいたけど、久しぶりにひろくんの顔が見れてよかった。

「相変わらずかっこよかったぁ…」

ぽそっと漏れでた本音は夕闇の中に吸い込まれて、来た時よりも軽い足取りで私は駅に向かったのだった。

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