第7話 幼馴染として

※もかひろ前提のもかあき




何年の付き合いだと思っている。奴の変化なぞすぐに分かる。羽澄嘉は目の前にいるこちらのことなどお構いなしに昼飯を食べ続ける男、白咲檬架を睨みつけていた。しかし実際彼の目は誰もが認める糸目、知らぬ人が見たら笑顔のそれだ。笑顔で人の食事をガン見する輩も怖いといえば怖いのだが…昼休みの旧校舎の一室で、嘉はメロンパンを頬張る男について考えていた。

変化に気づいたのは2週間前。初めはちょっとした違和感。特に気にすることもないだろうと放置しておいたのが悪かった。見る見る間に大きくなり、手に負えなくなってしまった。

今こそ一緒に昼休みを過ごしているが、それも奇跡に近いほど、嘉はここ2週間檬架に避けに避けられ続けられていた。理由など知らない。知る由も無い。しかし思い当たる節が…ないこともない。

一ノ瀬秋。2年に進級してから、檬架や早乙女八千男とつるみ始めた男。嘉も話こそすれ、特に深い付き合いをしているわけではない。あくまでも、友達の友達という関係だ。そんな彼が、理由。檬架が嘉を遠ざける、理由。しかし、推測のうちだ。確認したわけではないが…嘉はほとんど確信に近い形でそう認識している。

一ノ瀬と檬架が付き合い始めた。

檬架が嘉を遠ざける理由として考えるのには、このひとつで十分だった。

いくら2人が生まれた時からの幼馴染とはいえ、所詮友達。良くて親友。恋人には敵わない。男同士だとか、そんなものに偏見はない。

いや、今はそんなことを話しているわけではない。

問題は、奴が自分の気持ちに気づいてしまった、という点だ。今までひた隠しにしてきたものを知られてしまい死にたくなる。死んでそのまま自分の想い全て忘れ去って欲しい。檬架のこれからの人生に、自分は必要なくなってしまったのだ。恋人に、友達が敵うはずない。だから身をひくつもりではいたのだが、その前に知られてしまった。それが堪らなく辛い。

そんな自分の気持ちが迷惑で白咲は避けている。嘉がその答えに辿り着くのにさほど時間はかからなかった。当然といえば当然。それは彼が1番恐れていた結末だったからだ。

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