2018年1月23日ーー太らないアーモンドピッツァ前編
ちょっと大変なことが起こりました。
「お腹、むにむにしてるかも……」
「ふゅぅ?」
ただいま、朝のお着替えタイムでクラウは顔を拭いた後。
僕は先に歯磨きも一緒に済ませてからパジャマを脱いだんだけど、上を脱いだ時に少し……ほんの少し、裾がお腹に引っかかってしまった。
なんかおかしいぞと、キャミソールをめくって見たらぽっこりとお腹が膨れてる気がしたのだ。
触ってみたら、子供特有のモチモチした肌だけど、ちょっと掴めたんです!
「さ、最近寒いからあったかいものでも」
炭水化物を多く摂取し過ぎたからかもしれない。
ピッツァとか肉まんとかピッツァとか!
野菜は食べてなくないけど、ほとんどそう言う料理に混ぜる程度。
つまり、
「ふ、太った⁉︎」
「ふゅぅ?」
子供はたくさん食べなきゃって言われても、僕は本当の子供じゃない。
ついつい、好きなものをたくさん食べてしまったせいか元の年齢を時々忘れがちでいる。体の構造が今は子供でも中身は成人女性だから。
「こ、これは、運動もだけど。食事も変えなきゃ……」
朝ご飯は僕の勝手で変えられないから、とりあえずは昼からだ。
一応、ファルミアさんにも相談してみよう。
◆◇◆
「……ちっとも太ってなくてよ?」
朝ご飯を終えた後にファルミアさんのお部屋にお邪魔してからお腹を見せると、きっぱりそう言われてしまった。
四凶さん達にはクラウを預けて中庭に行ってもらってます。普段人型だから男の人に見せるのは気恥ずかしくて。
「可愛らしい子供のお腹じゃないの。気にする必要はないわ」
「け、けど、服が引っかかって」
「まあ、春と言っても季節柄まだ冬だから皮下脂肪がつくのかもしれないし。けどそうね。最近日本にいた時と同じような食生活を続け過ぎでいたわ」
ファルミアさんも気にされてたのか服の上からご自身のお腹を撫でた。ぱっと見は綺麗なお腹でしか見えない。
「カロリーより食べ物の調整ね。一気に抑えるんじゃなしに、主食……パンに麺料理を控えるくらいかしら」
「ちょっと、お昼に考えてるピッツァがあるんです!」
「小麦粉を何かに置き換えるの?」
「ええ」
作った回数は少ないけど、今から作れば間に合うはず。
とりあえずは、マリウスさん達に打診しに行くことになった。
「あら、ファルミア様とカティアちゃん?」
「セリカさん!」
あ、今日はお勉強の日だったかも。
「おはよう、セリカ。今日もカティの家庭教師?」
「いえ。今日はイシャールお兄様のところへ。そちらは終えましたが、カティアちゃんに明日もこちらの都合でお勉強は無理だと伝えに行こうとしてたのです」
「お家のご用事ですか?」
「そうね。私自身の勉学に少し」
まだまだ侯爵家に戻られてやる事もたくさんあるのに、フィーさんの提案で僕の勉強まで見なきゃいけないから大変。
あ、そうだ。
「帰るのってすぐですか?」
「いいえ。それほど急ぐ必要はないわ」
「じゃあ、セリカも作りましょう?」
「何をですか?」
「太りにくいピッツァです!」
「太りにくい?」
大声で話すにははばかれる内容なので、セリカさんにも付いてきてもらい厨房に向かう。途中、セリカさんにはファルミアさんがお着替えの魔法をかけて。
「小麦粉を、まったく使わないピッツァですか?」
「代わりに豆を挽いた粉を使うんです」
「豆の粉を?」
ただ今場所はマリウスさんが引き継いでいる専用の厨房。
ちょっと内緒事にしたいと告げれば、ここを開けてくれたのです。
「それでは、柔らかさが出にくいと思うのですが」
「今回はそれが目的よマリウス。全部が全部悪いんじゃないけれど、こちらに来てからの私やカティは特に運動をしていない。だから、その……好きなものを作っていると体型が気になるの」
「あ、ああ……なるほど。そのような」
女性にとっては付き物な問題だから、マリウスさんは少しほっぺを赤くされた。
「それで、本日の昼餉から少しずつ変化をと思われたのですね?」
「何事も不可欠ではあるけど、食べ過ぎも良くないもの。いい機会だし、うちの人にも制限をつけるべきね」
「あはははは……」
過去のシュークリーム事件?とやらで、ユティリウスさんは太ってた時期があったそうだから。
「承知しました。では、昼餉は皆さまにお任せしますがこちらはいかがしましょう? パンや麺を減らすだけで良いのでしょうか?」
「そうですね。あとは、甘みの強い野菜や根菜類を控えて緑の野菜をたくさん食べるくらいでいいと思います」
「なるほど。一概に野菜でも注意すべきは甘さなどですか。では、本日の夕餉は頑張ってみます」
「ありがとうございます」
ファルミアさんが言う通り全部が全部悪いんじゃない。
けど、食べ過ぎて蓄積したものが体で使われない分に追い打ちをかけては、体型にも変化が出てくる。
運動はクラウと鬼ごっこや隠れんぼでなんとかするにしても、食事の方も気をつけなきゃ。
マリウスさんは材料は気にせず使っていいと言ってくださってから退室しました。
「カティアちゃん、太ってるように見えないけど……?」
「ぱっと見でわからないですけど、お、お腹まわりが」
「普通じゃないの?」
「私もそう言ったけど、今朝そう感じたらしいのよ。今の身体はおそらく外見のままでしょうけど、そうなると逆に食べなきゃいけないのに。中身はセリカと同じくらいだもの」
「ぽこっですよ、ぽこっと!」
それとあのムニムニ具合は幼児体型と別物だと思うの!
◆◇◆
「まずは、アーモンドの粉。こっちだとナルツ粉と呼ばれてる粉を使うんです」
「普通お菓子なんかの材料だけど、これを生地にするのね?」
「温めたクリームチーズとチーズを混ぜたのに水と卵と、好みでハーブを入れるんですけど。せっかくですから乾燥のバジル使いましょう」
「カティアちゃん、釜は温まったわよー」
「はーい」
生地はアーモンド粉を大量に使う。
これを口でも言ったように二種類のチーズを溶かしたものと一緒にボウルに入れて、分量の卵と水と適量の乾燥バジルを入れて練り込む。
まとまったらこれも適量に分け、天板にクッキングシートを引いて生地を乗せて上からまたクッキングシートを乗せて手で出来るだけ均一に伸ばす。
ローラーがあればもっといいけど、見当たらなかったので手でやりました。
「伸ばし終えたら紙を外して、フォークで全体に穴を開けて釜に入れるんです」
「それはセリカにお願いしましょうか? 私とカティは残りの生地を伸ばすから」
「わかりました」
ここからは分担作業。
オーブン釜へ投入してからは、片付けと並行してメニュー作りですが。
「生地があれなら、他はいつも通りでいいんじゃないかしら?」
「けど、テリヤキチキンとかはやめます?」
「そうね。砂糖とみりんを使うあれはパスね」
と言うわけで、マヨネーズ系は控えて他をいつも通りにすることにしました。
「生地は先に焼いておくとクリスピータイプになるのかしら?」
「両面焼けばそうなりますね」
「それにチーズの塩気……いいわ、いいわ! 肉は発色剤がない分体に負担があるわけじゃないからそこまで気にしなくていいし」
「肉は、食べ過ぎてはいけなくもないんですね?」
「元いた世界じゃ、魔法が皆無だから保存法が色々あったのよ。ただ、口に直接入れるものが多いから完全に身体にいいとも言い難かったの」
「技術があるのとないのとでは、代償が違うんですね」
「そうね」
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