2018年1月20日〜2月3日頃ーー腐らない水を汲む

「寒いけどー、今日も運動しよう!」

「ふゅゆ!」


 と意気込んだのは良かったけれど。




 びゅーるーるるるー

 びゅぉおおおおおお




「しゃぶいーーーーーー⁉︎」

「ぶゅゆゆゆ!」


 突風と刺すような寒さにバックリターン。

 すぐに自分の部屋に戻りました。


「お城の中じゃ、暖房みたいな魔法で空調いじってるから平気だけど」


 なにあの寒さ。

 雪はだいぶ溶けたのに、また雪が降るんじゃないかってくらいに寒過ぎた。

 これはこれはもしや?








 ◆◇◆








「多分、大寒が近いわね?」

「ダイカンとはなんでしょうか?」

「一陽来復の後の方に訪れる、季節の節目の一つよ」


 疑問に思ってファルミアさんのところへ行くと、途中セリカさんと会ったので一緒になりました。

 冬至はフィーさんが取り入れても、大寒は伝わってないようだ。


「一年で最も寒い日や期間を言うの。カティが逃げ帰るくらいなら、明日くらいには酷い寒さになるはずだわ」

「これじゃあ、雪降ってもおかしくないですよね……」

「そうね。防寒具を着ててもやめておいた方が無難だわ。けど、一つだけやっておきたいことがあるわね」

「なんですか?」


 僕が聞くと、ファルミアさんはふふっと口元を緩められた。


「簡単なことよ。リュシアも誘って実行しましょう?」

「女性だけですか?」

「ええ、そうね。今回はその方がいいわ」


 具体的な内容を言われないので、僕やセリカさんは顔を見合わせて首を傾げるしかなかった。










 ◆◇◆








 翌日の朝。

 しかも早朝に、朝ごはんを食べる前にファルミアさんの集合によって僕達女性の皆(クラウは性別なしなので加えられた)で、裏庭のちょっと大きな泉にやって来ました。


「このように寒い朝に何をされますの?」


 防寒具完備、保温結界を全員纏ってるので寒くはないが、アナさんも誘われただけで具体的な内容はやっぱり聞かされてないみたい。


「大寒の朝に出来る特別な事をするの。そう難しくはなくてよ?」


 と言ってから、ファルミアさんは軽く手を叩いた。

 途端、ぽんぽんと音がして僕らの前に数本のワインボトルみたいなのが出現。


「これに泉の水を汲むのよ」

「こ、こんな凍ってなくても冷たい水を⁉︎」

「だからよ。カティは知らないようだけど、大寒の朝の水は日本じゃ重宝されていたのよ? 汲めば一年は腐らないって」

「「「腐らない??」」」

「ふゅぅ?」


 聞いたことがないけれど、ファルミアさんが言うなら本当だろう。


「水が腐るって言い方はおかしいけれど、日本じゃそう言われてるの。井戸の方が有名だけれど、この城じゃないからこの泉ね。塵やチリとかが冬の気候によって水底に沈むから本当に綺麗なのよ。だから、一年置いてても古くならないとされてるわ」


 なるほど。

 浄化なんかのろ過機能よりどうか比較は難しくても、立派な自然のろ過機能。

 その水を保管したら、一年はずっと美味しい水のままと言うのはすごい。

 アナさんやセリカさんも理解されてから、やる気が出たのかテンションが上がっていた。


「けど、なんで女性だけなんですか?」


 もっとたくさん汲むならエディオスさん達もいた方が力仕事にはもってこいなのに。


「まあ、いても良かったけれど。このお水を使って女性だけで料理しましょう? 大抵は仕込む方の食材が多いけれど、単純にスープにしましょうか。この間のカルキントはまだ残ってるから」

「それだけですか?」

「あら、鋭いわね? 私はともかく、あなた達は意中の人がいるのだから健康長寿を祈るためにもそれぞれ汲んだ水を渡してあげなさいな?」

「「「え」」」


 やっぱり、そう言う事だったんだ。

 その後、ファルミアさんとクラウ以外顔を真っ赤にさせながら水をたっぷり汲んで、マリウスさんに部屋を貸してもらってからかぼちゃのスープを作ってそれぞれの相手に渡しました。

 誰が誰にとは相手には言わずに、水の説明だけをファルミアさんがしてくださって男性は感心してくれましたが、僕らはしばらく顔の赤みが引かなかったです。

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