2016年11月20日ーー寒い時にはほかほかピザまん

「しゃ、しゃむい‼︎」

「ぶゅぅ‼︎」


 クラウを遊ばせるためとは言え、庭に出るんじゃなかったな。

 息はまだそんなに白くはないけど、吐けばかすかに白くなってきた。

 クラウも動かなきゃ寒いって感じに体をプルプル震わせていた。この子の場合毛が長くないから寒さが感じやすいのかな?


「お城の中に戻ろうか?」

「ふゅ!」


 ぴとっと僕にしがみついてきたので、僕はそのまま室内に戻ることにした。


「ふぅ、中は暖かいねぇ」

「ふゅ」


 冬直前とは言っても、気温は秋にしてはめっきり下がってきている。この世界ではまだ雪は見たことないけど、降るのかな?


「食堂で暖かい飲物でももらいに行こうか?」

「ふゅ」


 とりあえず、ここで突っ立っててもしょうがないので上層の食堂に向かうことにした。

 とてとてと階段を上って廊下を突き進んでいたら、奥から見覚えのある碧い髪が見えた。


「あら、カティ?」

「ファルミアさん」


 やっぱりファルミアさんだったね。

 後ろには窮奇きゅうきさんと渾沌こんとんさんが控えていて、他の四凶しきょうさん達はいなかった。


「ちょっと探していたんだけど、どこに行ってたの?」

「クラウと中庭に。かくれんぼしてました」


 部屋でずっと寝かせてたら運動不足になるからね。

 けど、クラウったら結構隠れるのが上手でなかなか見つからなかったけど。逆に僕はどこに隠れても5分以内で見つかっちゃう。

 それを話せば、ファルミアさんはくすくす笑った。


「神獣と言うより、守護獣が主人をすぐに見つけられないのはダメだものね」

「そう言うものですか?」

「そう言うものよ。ねぇ、カティ。外寒かったでしょ?」

「はい。なので、食堂に暖かい飲物もらいに来たんですが」

「なるほど。それなら、少し温まってからおやつ作らない?」

「今日は何を作るんですか?」

「そうね……せっかくカティも一緒なら、寒い日にはもってこいの『ピザまん』を作りましょうか?」

「ピザまん⁉︎」


 なんて寒い日にはもってこいのジャンクフードなんだろう‼︎


「ファル、ピザマンとは何だ?」

「我らにも振舞ってくれたことがないな」

「とりあえず、食堂で説明するわ」


 と言うわけで、4人で食堂に向かいました。

 食堂は当然誰もいなくて、僕らが入ればすぐに給仕のお兄さんが裏口からやってきた。


「これは妃殿下。いかがなさいましたか?」

「寒いからお茶を人数分ちょうだいな。それと、マリウスには後で厨房を借りると伝えてほしいわ」

「かしこまりました」


 お兄さんは一礼してからさっと裏へ戻っていき、僕らはとりあえずいつもの席に座った。


「ファルミアさん肉まん作ったことがあるんですか?」

「ええ。ピザまんも市販のピザソースでも作ったことがあるし、どうせなら両方作りましょうか?」

「わーい」


 肉まんも食べれるなんて最高だ!

 けども、


「ピザまんの餡ってどうするんですか?」


 僕が普通に作るトマトソースじゃあ、シャビシャビでとても作れそうにないと思うのだけども。


「そうね。あの時は他に野菜入れたりハムに包んだりしてたから……ラタトゥイユ風の餡にチーズを挟むのはどうかしら?」

「美味しそうです!」


 ラタトゥイユなら、僕も仕込んだことがあるから大丈夫だ。


「ファル、ニクマンとは昔幾度か馳走してくれたあの白いパンのようなものか?」

「そうよ、窮奇きゅうき。ピザまんはカッツとカティが作ってくれるマトゥラーソースを包んで蒸すものなの」

「「……美味そうだ」」

「頑張りますね」


 それから全員で暖かい紅茶を飲んで、窮奇きゅうきさんと渾沌こんとんさんは部屋で待機していると戻っていかれた。


「クラウはじっとしてるんだよ?」

「ふゅ」


 注意してから、クラウは僕の頭の上に乗せてファルミアさんと厨房に向かった。


「今日も借りるわね、マリウス」

「いえ、どうぞお使いくださいませ。ところで今日は何をお作りに?」

「うーん。マリウス達には惣菜パンみたいに思ってくれればいいわね。石窯じゃなくて使うのは蒸し器だけど」

「となると蒸しパンのようなものでしょうか?」

「中身は食事用だけどね。野菜と挽き肉を使わせてもらうわ」


 とりあえずは、材料集めからだ。

 ピザまんの具には玉ねぎにズッキーニ、ナス、パプリカ、セロリにピーマンとトマト。

 トマトソースはつい先日作った分がまだ残ってたからそれも使うことに。

 肉まんには、豚挽き肉に玉ねぎと生姜と言ったシンプルなものにするらしい。

 と言うのも、


「たけのこはないし、キノコはリュシアが苦手だもの」

「アナさんってキノコダメなんですか?」

「ええ。シュラムがキノコのことなんだけど、あの子全然ダメらしいの」

「そう言えば、最初の頃に聞きましたね」


 シュラムって言うのがキノコのことなんだ?

 それは知っておいてよかった。僕のレシピでは入れないけど、トマトソース作りに入れる場合はマッシュルームとか入れるもんね。


「鶏ガラ出汁とかもないから、味付けは塩胡椒だけにするわね」

「じゃあ、僕はラタトゥイユ作ります」

「私も肉まんの具作りからするわ」


 なので、ここからは分担作業。

 まずは集めた野菜をトマト以外は全部同じ大きさにカットする。

 カットが終わってから、固いものから順にフライパンで炒めていくよ。

 ちなみにズッキーニはラクトゥ、ナスはミュイラン、セロリはユキィシィと少々覚えにくい名前だ。由来がよくわかりにくい感じな気がするなぁ。


「ふゅふゅ」

「炒まってきたね。ここに魔術でペーストにしたマトゥラーを入れて」


 全体に馴染んできたら、コンソメ(ポルト)を少しとトマトソースも入れて味を調える。

 ミニスプーンで味見してみたら、久しぶりに作ったけどちゃんとラタトゥイユになっていた。


「ふゅぅ!」

「はいはい。ちょっとだけだよ?」

「ふゅ!」


 いい匂いがたまんないようで、ちょっとだけクラウにも味見させてあげる。

 頭から降ろしてスプーンであげたら、水色オパールの目をキラキラさせた。


「ふゅぅ‼︎」

「よかった。じゃ、これは冷ますのにバットに入れておいて」


 次はチーズだけど、シュレッドしたものがあるか先にマリウスさんに聞いてみる。

 すると、今日はいくらかはあるそうなのでそれを分けてもらうことになった。


「カティ、こっちの具作りも終わったから生地を作りましょうか?」

「はい」


 肉まんの生地ってどう作るんだろう?

 材料は、強力粉と薄力粉、ベーキングパウダー(フクラ粉)、ライドオイルに砂糖に塩、水と牛乳と乾燥の酵母(サルベ)。あと別にピザまん用のトマトペースト少々。

 材料はそこまでピッツァの生地と大きな差はないな。牛乳入れるのには驚いたけどね。


「粉と砂糖に塩をまずはよーく混ぜ合わせておくの」


 そして、水と牛乳を合わせてぬるめにしておいたのに乾燥の酵母を入れてイースト液を作る。

 これとライドオイルを粉に入れてよーく混ぜてまとまるまでボウルの中でこねていくんだって。


「まとまってきたら、ボウルに叩きつけながらこねてツヤ出しをするのよ」


 ダン、ペシっと言う感じでこねていく様子を真似て僕もやってみる。

 ファルミアさんが言う状態になったら、ボウルに濡れ布巾をかけて2倍以上膨らむまで発酵させるそうだ。


「さて、今の内に識札で皆に伝達させておくわ」


 と言って、魔術で紙とペンを出現させた。

 さらさらと紙に書き込んで、出来上がったら空中に浮かせてふって息を吹きかけたら鷲のような姿の鳥に大変身。


「それぞれの場所へ向かえ」


 ファルミアさんがそう命令したら、紙の鷲達はすぃーっと厨房から出て行った。


「じゃあ、手を洗ってから一旦コフィーでも飲みましょうか?」

「そうですね」


 発酵するのにはどうしたって時間がいるもの。

 それと今日は時間もまだあるから時間操作する必要ないしね。

 クラウにはホットミルクを入れてもらい、しばし小休憩することに。


「肉まんなんて手作りは初めてですよ」

「けど、そこまで難しい行程ではなかったでしょ?」

「ええ。次は餡まんとか作りたいですね」

「あら、いいわね」


 それにコンビニの中華まんのレパートリーはネタ物を含めて色々あったなぁ。


「コンビニの中華まんだと、さつまいもとか小籠包風とかもありましたよねぇ」

「地域限定とか期間限定も入れるとコンビニによっては色々あるものね。私は一度カスタード入れたの作ってみたことあるけど、なかなかいけるわよ?」

「うわぁ……」


 絶対美味しいに決まってる。

 今日は食べれないの残念だけど、まだファルミアさん達は滞在されるから機会はあるものね。


「ふゅぅ?」


 クラウにはちっともわからない単語だから、ちんぷんかんぷんで首を傾げていた。


「ふふ。とっても美味しいものだってわかってもらえればいいわ」

「ふゅぅ」


 ファルミアさんに撫でられたら、クラウはわかったよーって感じにコクコク頷いた。

 それからコンビニスイーツとかの話で盛り上がり、完璧な再現は難しいがいくつかは作ってみたいとかと決まったりしてから厨房に戻った。


「膨らみ具合も上々ね。じゃあ、カティが作った生地にマトゥラーのペーストを混ぜ込んでね」

「はーい」


 ガス抜きをして指示通りに混ぜ合わせたら、綺麗なオレンジ色の生地になっていく。

 これを人数分に仕分けてから10分程ベンチタイムにするらしい。

 その間に蒸し器の準備だ。

 人数が多いので、釜コンロにおけるだけの蒸し器を用意する。この世界の蒸し器は主に野菜や肉を蒸す用途がほとんどで、たまに蒸しパンを作ったりもするんだってさ。


「こう見ると圧巻ですねぇ」

「最低20個以上蒸すもの、これくらいは用意しておかなきゃね。敷き紙も用意したし、餡を包むわよ」


 まずはファルミアさんがお手本も兼ねて肉まんピザまん両方を1個ずつ包んでくれるらしい。

 生地を麺棒で伸ばして、真ん中に餡を乗せて上下を軽く引っ張り寄せるようにつまむ。これを対角線上の生地もつまんで、最後にきゅっと中心を絞れば馴染みある肉まんの形が出来た。

 ピザまんは餡の上にチーズを乗せて同様に包めばいいそうな。


「さぁ、カティもやってみて」

「頑張ります」

「生地は中央を薄くしちゃうと破ける可能性があるからいくらかは高さを残してね」

「わかりました」


 なので、少し均してから中央から端に向けて伸ばした。

 包むのも出来たら、バットに置いてある敷き紙の上に乗せる。これを2人でピザまんも含めて50個以上包んで、出来上がったら固く絞った付近を被せてまた発酵させるそうな。

 この後にお湯を沸かしていたら、給仕のお姉さんが皆揃ったことを知らせてくれたよ。


「じゃあ、今日は素手で食べるから濡れ手拭いを1人2本ずつ用意しておいてちょうだい」

「かしこまりました」

「それと、肉まん用に酢醤油作っておけばいいわね」


 辛子はないそうなので、単純に酢醤油だそうだ。

 蒸し器の準備も整ったら、肉まんピザまんを入れてサラシを蓋の間に挟む。こうしないと蓋の裏に溜まる水蒸気のお湯が生地にかかるからだって。


「砂時計で八半刻(20分)弱、中火から強火で蒸し上がれば完成よ」

「いよいよですね!」


 ほかほかの肉まんにピザまんが食べれるんだ。

 片付けをしつつ、蒸し器のお湯の様子も見ながら蒸し上がるのを待てば蒸気に混じってほんのりと小麦粉のいい匂いがしてくる。


「カティ、出来上がったわ」

「こっちも拭き終わります」


 ボウルと麺棒を拭き終わって戻しているうちに蒸し上がったそうだ。

 調理台の上を見れば、ほかほかの湯気が立ち上った肉まんにピザまんがお皿に乗っていた。


「うわぁ、美味しそうです!」

「ふゅぅ!」

「残りは厨房用ね」


 その分はマリウスさんに蒸し方を教えて、時間がある時にするようファルミアさんが伝えた。

 なので、取り分けも終わってから食堂に向かいましたよ!


「今日は肉まんとピザまんよ!」

「「「ニクマン?」」」

「「「ピザマン?」」」


 席についていた皆さんに言うも、どうやらわかんないらしかった。

 ユティリウスさんも、食べたことがないみたい。給仕のお兄さんお姉さんがそのお皿を置いてくださると、セヴィルさんと獣’s以外の男性陣はむにむにと肉まんやピザまんを突き出した。


「なんかもちもちしてんな?」

「パンみたい?」

「けど、湯気立ってるね?」

「これは素手で食べるのか?」

「ええ。だから手拭いがあるでしょう? 敷き紙を剥いて食べてちょうだいな」


 冷めないうちに食べようと言うことになり、とりあえずいただきますをしたよ。


「こちらの橙色とはどう区別されてますの?」

「そっちはピザまんよ。中身はカッツと野菜を炒めてマトゥラーソースで味付けしたのを入れてあるの。ピザまんはほとんどカティが作ったわ」

「まぁ、そうですの」

「白い方がニクマンとやらか?」

「ええ。豚挽き肉にアリミンとジャインと塩胡椒で味付けしたものが入っているの。物足りないなら、サイソースと酢を混ぜたタレがあるからそれをつけてちょうだい」


 ジャインは生姜のことだそうです。

 全然ジンジャーにかすりもしないなぁ。

 それよりも、熱いうちに食べなきゃだ。

 クラウには熱すぎるからまずは僕が肉まんに手を伸ばす。半分に割れば、白い皮の中に薄茶色の肉餡が顔を出してくる。

 タレもいいが、せっかくだからそのままを頬張れば塩豚まんの味が口いっぱいに広がった。


「美味しいです!」

「ありがとう。カティのラタトゥイユのピザまんも最高よ」

「本当ですか?」

「うん。カッツの伸び具合もいいし、これ美味しいよ!」


 ユティリウスさんも大満足なようだ。

 そのままかぶりついたのか、みょーんとチーズが伸びていた。


「こいつぁ、初めてだな? 蒸しパンの中身が違うだけでこんなにも変わるとは」


 サイノスさんは豪快に4分の1を頬張っていた。

 これはエディオスさんとフィーさんも。

 セヴィルさんは小さくちぎりながら食べていたけどね。


「ふゅ、ふゅぅ!」


 僕はまだーって、クラウが急かしてきたので自分のピザまんは後にして先にクラウの肉まんを食べさせてあげることにした。

 出来るだけクラウが持ちやすいサイズにちぎってあげてから、1つ持たせてあげた。


「まだ熱いから気をつけてね?」

「ふゅぅ」


 それからあーぐっと口を開けて頬張る。

 すると、やっぱり美味しいのか水色オパールのお目々をキラキラとさせたよ。


「ふゅふゅぅ‼︎」

「ゆっくり食べなよ?」

「ふゅぅ」


 けど、言ってもあんまり意味はないので、ピザまんの方もちぎっておいた。

 終わってから僕は若干冷めたピザまんの方にも手を伸ばす。こちらも半分に割れば、まだ中は温かいのかチーズがみょーんと伸びたよ。


「いただきまーす」


 がぶっとかぶりつけば、皮はほんのりトマト風味で中身はとろとろチーズとラタトゥイユが絶妙にマッチした餡でとっても美味しゅうございました。


「素晴らしいですわ。蒸しパンの中身を食事用に変えただけでこのようになるとは」


 アナさんいつも以上に食が進んでいるみたい。

 肉まんにキノコ入れなくて良かったなぁ。言わないでおいてあげるけど。


「ふふ。気に入って?」

「はい。お肉はさっぱりと、ピザマンの方はカッツとお野菜の絡み方が絶妙ですわ」

「これ食事用だけじゃなくて、餡子だったりクリームを入れてお菓子風にすることも出来るのよ」

「まあ、そうですの?」

「菓子はいい……」


 セヴィルさんはクリームの単語に顔をしかめちゃった。


「このままで充分美味いだろうが」

「けど、こう言うパンの中身って食事用と言うかむしろおやつ感覚なのよ? ゼルにはサムト(ごま)餡子なら食べれるんじゃなくて?」

「サムトのアンコ?」

「このパン……皮の中身のことも餡子って言うんですよ。サムトのペーストを入れたりするんです」

「……まあ、それならおそらく食べれそうだが」

「つーか、これ2個だけか?」

「なんか余計にお腹空いちゃうー」


 あの、1個が通常の肉まんとかよりもジャンボサイズに作ったんですが?

 エディオスさんとフィーさんもだけど、ユティリウスさんや四凶しきょうの皆さんも物足りなさそうだった。クラウは言わずもがな僕の袖をくいくい引っ張っててお皿はもう空っぽ状態。


「ダメよ。残りは厨房用にあげちゃったからこれでおしまい」

「「「えー」」」

「お前ら食い過ぎになんだろう? フィーやユティはエディと違って特にすることないだろうが」

「だってさ?」

「美味しかったもんねー?」

「賞賛は嬉しいけれど、ないものはないの。これはパンやピッツァと同じくらい仕込みに時間かかるんだから」

「「時間操作すれば?」」

「まだ私とカティを働かせる気?」


 ぴきぃっと、部屋の空気が凍った気がした。

 あ、これはなんかマズイかもしれないぞ。


「……カティア、クラウと俺の背に隠れろ」

「はい?」


 どうして?と首を傾げたら、いいからと手招きされたのでクラウを抱っこしてセヴィルさんの背中に回った。


「働かざる者食うべからず、と言う言葉を忘れて?」


 ファルミアさんの低い声と共にびょぉおおって風が吹くような音が聞こえてきた。

 セヴィルさんの後ろからそろっと覗けば、ファルミアさんの周りだけ何故か吹雪いてた。

 なんで吹雪が⁉︎


「カティア、出来るだけ覗こうとするな。こっちに結界は張ったが巻き込まれないとは言い切れない」

「え?」

「こちらにお邪魔させていただきますわ。ファルミア様の氷の魔術にわたくしも巻き込まれたくありませんもの」

「ありゃ、ファルの琴線に触れたな」

「俺知らねぇ」


 続々と僕の周りに人が集まり、テーブルの向こう側は手と手を取り合いながら怯えてるフィーさんとユティリウスさんが、ファルミアさんに物凄い睨まれてた。

 あ、流石にわかったよ。これお2人は詰んだってことは。

 なので、セヴィルさんの言う通り後ろに戻れば吹雪の音が更に強まり、何かが凍る音がした。

 完全に音が聞こえなくなってからちょろっと覗けば、お2人は見事にカチンカチンに凍っちゃっていました。


「うわぁ……」

「しばらくそのままで反省してなさいな」


 ぷんすかと怒ってるファルミアさんは随分ご立腹らしい。


「……ファル、フィルザス神がご一緒ではすぐに溶けるのでは?」

「三重に凍結させたから、いくらフィーでもリースが一緒だから四半刻はかかると思うわ」


 それ死なないよね?

 大丈夫だよねと心配になってきちゃうが、僕とクラウ以外は呆れてるだけだったのでそう言った懸念事項はなさそうだ。

 結果、ファルミアさんが言った通りに30分後にフィーさんとユティリウスさんは氷から脱出してお風呂へ直行していった。

 それからは、出されたものだけで満足するようになり無理にお代わりを催促することはなくなったよ。

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