2016年6月21日〜7月6日頃 夏至で暑くなったからにはpart2
「アルグタを使ったシロップなんだってさ」
「アルグタを……? って、何故種が? これは取り除く必要が」
「はーい、君も食べてみようか?」
「んぐ⁉︎」
どこからか取り出したスプーンでシロップをすくい、問答無用にマリウスさんの口に突っ込んだフィーさん鮮やかです。
「……思ったより酸っぱくない?」
「でしょー? 僕もさっき驚かされたんだよ」
うーん、やっぱりキウイの正しい食べ方がどうも伝わってないみたいだ。これを機会に不人気らしいこの果物の需要をなんとかしなきゃいけないね。ビタミンたっぷり、食物繊維などが豊富なこの果物は食べ過ぎはいけないけど、冷やして食べると美味しいんだよ? 食べ物を無駄にしてはいけませんぜ!
では、器もシロップも揃ったことで食堂に向かいましょう!
もうそろそろ皆さんも来てることだろうし?
「待ってたぜー……って、赤はまあ予想つくが黄色いのとかなんなんだよ?」
食堂に着いたらもうエディオスさん達が来ていた。ただ、アナさんだけはまだ来ていなかった。仕事が押してるのかな?
「多分だが、リモニか?」
「正解ですー」
先に例を出してたのをセヴィルさんは覚えてたみたい。ただ、3つ目に置いてあるアルグタの瓶を見ると怪訝そうに眉を寄せられちゃった。
「……なんだこれは?」
「アルグタシロップですよー?」
「アルグタ⁉︎ 種ごとではないか!」
「おい、カティア。お前にしては珍しく調理法間違ってやしないか?」
そんなに騒がなくても。
しかし、ここはもうこの人達にもわからせてあげないとね。
「アルグタは本来種ごと食べちゃうのが普通なんですよ? 僕がいたとこじゃ皮を剥いてスライスして食べたりするのが一般的でしたから」
「そんなに悪くなかったしねー?」
「そう、なのか……?」
「フィーも納得してるこたぁ食ったのか……」
まだ信じられないようだね?
こりゃフィーさん達の時みたく無理に食べさせるか。と思っていたら、
「お待たせしましたわ。……まあ、皆様どうかなさいまして?」
遅れて登場、アナさんだ。
お、ここはひとつアナさんにご試食いただこう。
あらかじめ用意しておいたシロップレードルでアルグタシロップをすくい、器に少量入れる。これを持って、僕はアナさんの方に向かった。
「アナさん、何も言わずこれ飲んでみてください」
「はい?」
僕はアナさんにその器を無理に持たせて飲むよう促す。早く早くとはやし立てると、アナさんはなんとかその器のシロップを飲んでくれた。
「……まあ、甘酸っぱいですが。このプチプチしたものはなんですの? 面白い食感ですが」
「アルグタの種です」
「え、た、種ですの⁉︎」
おっかなびっくりされてたけど、器に残ってたらしいシロップをもう一度飲み干してペロリと唇を舐めた。
「驚きましたわ。種の食感でアルグタのあの酸っぱすぎる味がありませんもの」
どうやら気に入ってくれたようです。
んで、エディオスさんは気になって僕のを見様見真似で覚えたのかレードルでシロップを器に入れてました。おそるおそる舐めると、『美味い⁉︎』と驚いた声を上げられた。やったね。
「でも、カティアさん。これをどう使いますの?」
「今から氷を削るんでそれにかけるんです!」
今日のメインはシロップじゃあありませんよ。
台車に一緒に乗せてきた氷達をまずフィーさんにお願いして浮かせてもらいます。
次に僕が浮いた氷の1つの下に器を持って近づき、片手を氷にかざして呪文を唱えます。
「縦横無尽に回れ、『
一番最初に覚えた魔術に付与術として詠唱を加える。フィーさんみたく無詠唱でぱぱっとこなすことなんて無理だからこうするしかないのです。最初は恥ずかしかったけど、今はもう慣れた。
手から出現した風の球が縦横ぐるぐると回り出し、細かい刃ではなくカンナ刃みたいな斜めに出っ張った刃が出現して氷に近づいていく。すると、シャリって音と共に氷が薄ーく削れてきた。成功です!
シャリシャリと薄く削れていく氷達を僕は器で受け止めていき、ある程度こんもりと盛ったら風の球は一旦止めておいて器を新しく持ってきたら削っていくというのを人数分行っていく。
「出来ましたよ!」
「へぇ、こういう風に削るたぁ初めてだな?」
「雪ともまた違うな?」
「これに今日は3種類ですが好きなシロップをかけて食べるんです」
トップバッターはもちろんエディオスさんですね。
赤黄緑とあるシロップどれにしようか最初悩んでおられたけど、結局はプチカシロップに決められました。
「結構綺麗なもんだな?」
「溶けちゃいますから先に食べててください」
「お、そういうことなら」
と、一緒に渡したスプーンでしゃくしゃくとシロップとかき混ぜ一口頬張る。
「ん……うめ⁉︎」
「良かったです。次はフィーさんどうします?」
「そーだねぇ。僕もプチカにするー」
「はーい」
こちらにもごろっとたっぷりシロップをかけましてお渡しします。
「アナさんやセヴィルさんはどうされます?」
「ゼルお兄様、お先にどうぞ?」
「ああ……そうだな。せっかくだからリモニのを」
「はーい」
ほとんどセヴィルさんの為に用意したシロップだもんね。
でも、たっぷりはかけずに適度にレードル一杯分。
雪のような薄氷の上に黄色いシロップがグラデーションのように染み渡る。綺麗なものです。
「まあ、美しいですわね。ですが、わたくしは先ほどのアルグタシロップでよろしいでしょうか?」
「はーい」
承って、アナさんにはアルグタシロップをたっぷりと。最後の僕は元から知ってる特権を活かしてプチカ半分とアルグタ半分をかけますよ?
「あ、カティアずりぃ!」
「えへへー、誰も1種類とは言ってませんからね?」
まあ、かけ方にコツがあるので3種類は難しかったけどね。
しゃくしゃくとスプーンを使って真ん中の苺ちゃんが乗ってるところをすくい口に運ぶ。
うーん、添加物無し素材を活かした苺シロップの優しい甘みがなんとも言えません! 反対のキウイシロップは少し甘酸っぱく口の中をさっぱりとしてくれる。うんうん、こっちもすっごく美味しい! 作って良かった。
「……美味そうに食べるな?」
「う?」
スプーン咥えたまま答えると、いつの間にか隣にセヴィルさんがいらっしゃいました。
いやだ、今のかき込んだ姿見られちゃったのかな?
ちょいと恥ずかしいや。
「……どうですか?」
とは言え、セヴィルさんの反応も気になる。
すると、セヴィルさんはスプーンでかき氷をすくって口に入れてくれた。
「ああ、少しだけ甘いがこれくらいがちょうどいいな。リモニの酸味もよく効いている」
「良かったです!」
砂糖よりも蜂蜜を多めに使って良かったぁ。
こう言うのが好きそうなら、今度差し入れにリモニを使った蜂蜜レモン漬けでも作ってみようかなぁ?
休憩の合間には適度な糖分が必要だし、食べなくても紅茶に混ぜるも良し。うん、今度作ってみよう!
「ところでカティア」
「え、はい?」
考えてる最中にセヴィルさんに声をかけられた。
「少しだが、そのアルグタのをもらっていいだろうか?」
「あ、はい。いいですよ」
どうぞと僕は器を差し出した。彼はスプーンで少しだけアルグタの方をすくい上げて口に含む。
「……こちらの方が少し甘いな。だが、悪くはない」
「砂糖を少し多めに入れてありますからね。あ、僕も少しいただいていいですか?」
「ああ、いいぞ」
許可をいただいてリモニシロップを少しいただく。たしかに甘みはほのかにあるけど酸っぱさが際立っていた。だけど、さっぱりして美味しいや。
「ん……? ってぇ⁉︎」
「う?」
美味しさに浸っていたらエディオスさんがいきなり声を上げられた。
痛がるような声だったけど、あれってもしや。
「いったぁ? なんだ、急に頭が痛み出したぞ」
「エディオスさん、もしかして勢いよく食べませんでした?」
「ん? ああ、美味かったんでつい、な」
「ついじゃなくて、それが原因ですよ。氷はいきなり食べ過ぎると頭痛が起きるんですから」
「え……って、いったぁ⁉︎」
と言ってたらもう1人やらかした人が。もちろんアナさんとかじゃなくてフィーさんだよ。振り返ったら痛そうに片手を頭に添えていた。
「フィーさんもかき込んだんですか……」
「だって美味しいからつい……神の僕に頭痛を起こさせるとは、氷とは言え侮りがたいね」
「僕と一緒に作った氷じゃないですか」
特に変哲も何もないと思うのだけども。
とは言え、美味しいと言ってもらえるのは嬉しい限りだ。
「かき込んだらああなりますのね。危うくしかけるところでしたから良かったですわ」
アナさん、貴女もやりかけてたのね。これ特に治療法がないので過ぎるのを待つしかないから、お願いですのでやらないでくださいね。
セヴィルさんは当然することはなくのんびり召し上がってられていた。これが普通だよ。
2杯目は僕がやってたツートーンが欲しいとエディオスさんとフィーさんに強請られて、赤と黄色のツートーンと黄色と緑のツートーンのかき氷を作ってあげました。
だと言うのに、あれだけダメだと言ったかき込むをまたもやしでかして頭痛に2人で見舞われてしまった。
もう僕はしーらないっと。
それより僕は残りの氷を持ってって、上層調理場の皆さんにかき氷を振るって上げました。だけども、若い人はこぞって皆さんかき込んで頭痛に見舞われた。
なぜ皆さんするのでしょう?
とは言え、これは良いとマリウスさんがエディオスさんの許可をもらってから中層や下層にも配給することになりました。
もちろん僕もお手伝いしたよ? シロップも僕達分に作ったのじゃ足りないので、主にペチカを主体に作りました。だけどもキウイことアルグタシロップは見た目のこともあるから上層だけで捌くことになったよ。美味しいけど、まだまだ需要が少ないアルグタ。もっと美味しい食べ方がないか僕も試行錯誤してみないとなと僕は決めた。
とりあえずは、僕の朝ご飯のデザートにもらえることになったよ! やったね!
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