小説家を目指している女の子のはなし②
【小説家になろう】
そう思い経ち、小説を書き始めて約1年半ほど経った。
相変わらず起承転結は苦手だし、分からないことも多いけれど―
此処のところ、何か掴めてきた気がする。
『こう書くと読者ウケする』とか、『こういうジャンルが人気がある』とか。
「小説家になる為には、知識だけでなく経験も必要よ」
母が昔から口酸っぱく何度も私に話していた言葉だ。本当に、その通りだと思う。
『失敗をして嫌な思いをするのは嫌だ』と考え、新しいことに挑戦することを避けていたら、面白い小説が一つも書けなくなってしまった。
「やっぱり、経験するって大事なんだなぁ・・・」
誰に聞かれるでもなく、ポツリ小さい声でそう呟く。
語彙力や雑学のような知識も、小説を書く上には大切であろう。
だけど、読者を引き込ませるもの―〝アッと驚くような〟小説を書こうと思ったら、毎日パソコンの前で座っているだけでは書くことなど到底出来ない。
「有村さんは駄目ねぇ。貴女みたいな人、一生社会でやってはいけないワ」
「梨沙子ちゃんって、ちょっと変わってるよね。いつも一人の世界に没頭してるし」
―今まで嫌なこと、辛いことたくさんあった。
脳内から全て記憶を消し去ってしまいたいほど悲しかったことも。
だけど、色んな経験をしていて良かったと、今は胸を張ってそう言える。
経験から得た知識が、人との繋がりが小説を書く上でとても重要な糧になっているから。
(森絵都(もりえと)さんみたいな小説家になりたい)
という想いが何処かにあった。私の文章は、彼女とはほど遠いけれど、
初めて彼女の小説を読んだとき、自然とそう思ったのを覚えている。
こうやって、他人を温かい気持ちにさせる小説が書けるようになれたら良いなぁって。小説家を目指すきっかけをくれたのは、この作家さんだった。
「梨沙子ちゃん、あの小説の続き、まだ?楽しみで待ちきれないよ」
「次はどんな小説書くの?書けたら、真っ先に私に教えてね」
―色んな方々の声援を受け、私は今日も小説を書く。
私一人っきりだったら、とっくに挫折していたかもしれない。
私の書いた小説など、誰も相手にしてくれなかった頃―
「賞、取れると良いね」「小説書くの凄く上手だね。」と、励ましてくれる友人達が居たから此処まで来れたのだと、強く実感している。
(さて、次はどんな物語を書こうかな)
胸を震わせ、手元にあったペンを握る。目の前にはまっ白な紙と消しゴム。
私はこの瞬間が大好きだ。物語を一斉に紡ぎ出す、この瞬間が。
「息子には、LD(学習障害)っていう障害があるのですが―
世の理解を深める為にLDを、テーマにした小説を書いて頂けないでしょうか?」
「母の介護のことで悩んでいて―介護問題をテーマにした小説を書いて欲しいの」
毎日のように受信箱に送られてくる、要望や声。
全ての方の声にお応えすることは出来ないから―毎月、その中から一通
選んでテーマを決めて小説を書いている。
「介護モえノは前回やったから―今回は、福祉的なコトにチャレンジしてみようかな」
ペンをくるくると回し、どちらにしようか真剣に考える。
何にしようか考えてる時が、一番楽しい。書き始める前の、何とも言えない高揚感。果たして、どんな物語が出来上がるのだろう?この小説を読んだ人は、どんなことを感じるのだろう?うきうき、わくわくと心が弾む。
「梨沙子、ご飯よ。いい加減、下に降りてらっしゃい」
夜の19時―母にそう言われるまで、必死に物語を書き続ける。
人に言われないと、何時まででもやってしまうから困ったものだ。
はーい、と大きく返事をし、父と母がいるリビングへ向かう。
『あの部分は、あっちの表現が良かったかな?』
私の頭の中はいつも、小説を書くことでいっぱいだ。
小説家になりたい女の子のはなし @karaokeoff0305
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