第十話 旅の続き

 八皇は自宅の玄関に跳んでいた。

 優しい木の香りが心を落ち着かせる。

「やっぱり木造は良いな」

 そう呟き玄関を出る。

 

 目の前にはカルセがいた。

「八皇さまこんにちは!」

 明るい声で挨拶をしてくる。

 来ることは念話で既に連絡済みだった。

「こんにちはカルセ」

 笑みをこぼすとカルセの頭を軽く撫でる。

 にへらっと表情を緩めたカルセはされるがままだ。

 一頻り撫でると

「じゃあカイトに挨拶してから行くか」

「うん!」

 二人は族長であるカイトの家に向かう。


「おう。行ってこい」

 そう言うとカイトは手を振る。

「あぁ、じゃあ行ってくる」

 八皇の力はカイトも知っている。

 離れていても目的地に一瞬で移動できる能力は旅でも便利だ。

 何せ泊まる必要がなく、カルセを夜一人にすることもない。カイトの所に送り届ければいいのだから。

 村の警備はカイトを筆頭に戦士達がしているし、森の中はグルカが目を光らせているので問題はない。

 八皇とカルセは手を繋ぐと淡い光を残して消えた。


 この世界は知らない事ばかりで毎日が新鮮だ。

「さ、今日は街で買い物でもしようか」

「うん!」


 共に在る幸せ。

 異世界で見る彼女の笑顔が八皇にとっては一番の癒しであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

仕事とプライベートは分けてます!ー鉱物達と行く異世界旅行ー リフ @Thyreus_decorus

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ