第五話 現実への帰還
気がつくと味気のない電気の明かりに照らされていた。
机の上に残された弁当箱。点けっぱなしの電気。独身部屋特有の静けさ。
「あれ? 俺は……」
いつの間にか寝てしまっていたのだろうか。
「――ッ!?」
頭の中にさっきまでの出来事が思い出される。
森の匂いと川のせせらぎ、獣の息遣いと死の恐怖。
今も耳の奥で鳴り続ける血の音。
心臓が張り裂けそうなほど脈打っている。全身から汗が吹き出す。
それは現実と認めるに十分な感覚だった。
恐る恐る足裏を撫でると苔や土で汚れていた。
「夢……じゃない」
一気に血の気が引いた。あと少しで自分は死んでいたかもしれない。
「でもどうして」
この世界に戻れたのだろうか。
特におかしなことはしていない。挙げるとすれば最後にブレスレットに願ったことくらいか。
視線を腕に向ける。
そこには行く前と変わらない鉱物達の姿がある。
「まさか、な」
そう呟くと八皇は少しだけ笑った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます