ある晴れた日に 5
夕暮れが迫ってくると、明かりの少ないこの集落はすぐに暗くなってしまう。
セインは、アーサーとともに、この先のことを話し合おうと、閉店間近のカフェで待ち合わせをした。店主が気を利かせて道のほうまで灯りを出してくれている。正直、ありがたかった。
しばらく待っているとアーサーがアイラやイクシリアを連れてやってきた。二人ともカフェに来るとあって、少しおしゃれをしていた。
話は、セインが切り出した。
「昨日、イングランドにある、とある畑に隕石が落ちてきた」
すると、アーサーがすぐに話に乗ってきた。
「輝から聞いたぞ。ずいぶんと長い間光っている流れ星があったって」
セインは、頷いた。
「調査する必要がある。私はまだここにいてやることがあるから、週に一回のペースで君やイクシリア達にも調査に行ってほしい」
「セインの、やること?」
アイラがいぶかし気に聞いてきたので、セインはアイラの肩を抱いた。セインはアイラに、彼自身の仕事のことをまだ話していなかった。ここで明かす気でいたのだ。
「アイラ、黙っていてすまない。輝のことはもう、気付いているだろう?」
アイラは、問われてそっとセインから離れた。
「海のシリンとして目覚めた日から、少しずつ瞳の色が変わってきていることくらいは。お姉ちゃんが先に気づいたんだけど」
アイラはそう言ってイクシリアを見た。彼女は自分に話の矛先が向いていることに気づかずに、コーヒーを飲んでいる。
「イクス、それで輝の様子はどうなんだ? 何か感じるところはあるのか?」
アーサーに問われると、はじめてイクシリアはコーヒーをテーブルの上に置いた。
「まだ何とも言えません。ただ、彼の存在感が増してきているのは確かです。もしかして、月のシリンであるフォーラさんに匹敵する力を持つかもしれません。町子はまだ砂漠のシリンとして目覚めていませんし」
「砂漠」
セインが、そう言って少しの間考えた。
「イクス、町子が砂漠のシリンだと分かったのは、アーサーの、空への伝言からだったね」
イクシリアは、何も言わずに頷いた。
アイラが、黙ってしまった姉の代わりに口を開く。
「空への伝言、そこでそんなことまでわかるのね。アーサー、アースの許可は取ったんでしょ?」
「もちろんだ」
アーサーは、そう言って冷めたコーヒーを口に運ぶ。
すると、そこに誰かの大きな影が二つ、現れて、セインが立ち上がった。
「モリモトさん、エル、こんな時間にどうしたんですか?」
問われて、モリモトが照れながら席に座った。
「いや、散歩していたらこのカフェが目に入ってね。最近はすっかり常連なんだが、こんな時間に店を開いているのは珍しいから、入ってみたんだよ」
「こんな時間に散歩ですか」
セインが少し不思議そうに尋ねると、今度はエルが返してきた。
「この時期はこの時間が一番いいんだ。往診も終わっているしな」
エルとモリモトは、こなれた様子でコーヒーを二杯、頼んだ。
「そう言えばお二人は暁の星に帰らないのですか?」
イクシリアはふと質問をしてみた。すると、コーヒーを待つ間にモリモトが答えてくれた。
「私たちも、セベルやジルとユーグも残るつもりだ。ナリアとメティスが自分の星を空けてまでここに残る以上、その理由を知る我々も残ることになるだろうから」
「それは、隕石のことですか?」
アーサーが問うと、モリモトは頷いた。
「やはり、あなたたちもご存知でしたか。今のところ脅威は感じませんが、どこか引っかかるのです。この引っかかりが皆を地球のこの場所にとどまらせている。そう思えてなりません」
「そうですか」
セインはそう言うと、アーサーと同じく冷めたコーヒーを飲み始めた。そのうちにモリモトとエルのコーヒーも来て、にぎやかなカフェタイムが始まった。
皆は、しばらくコーヒーを飲んで喋ると、イーグニスの作るごちそうを目当てに、その場を去った。遅い時間まで店を開けてくれていた店主には、いつもより少し多いチップと、感謝の言葉を残していった。
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