ある晴れた日に 3

 パーティーも終盤に近づいてきたころ、輝は宵闇迫る庭先に出て行ってみた。アースとシリウスも一緒だったが、このパーティーの間中一緒にいたので気にはならなかった。むしろ、アースもシリウスも、輝のもとにやってくるいろいろな人間の扱いには慣れていて、すぐに断ってくれたのでありがたい存在だった。

「さすがは王様とその護衛だな」

 輝が呟くと、シリウスはまんざらでもない様子だった。アースはそのつぶやきを知ってか知らずか、あさってのほうを向いている。

 庭に出ると、きれいな月が出ていて、輝はふと、フォーラを思い浮かべた。そのすぐそばを、流星が流れていく。ずいぶんと長い間輝く流星だった。

 その流星を見送って、輝は深呼吸をした。アースが噴水の淵に座って、その石でできた淵を指でなぞる。

 その時、声がかかった。

「輝君、おめでとう」

 メティスだった。彼はナリアと一緒に立食を楽しんでいた。夕涼みにこちらに出てきたのだ。

「アース、君は輝君のおかげで自由に動けるのだから、感謝をするんだよ。それとシリウス、君は」

 そう言って、メティスはナリアに目配せをした。ナリアは頷くと、シリウスのもとへ、手を差し出した。

「ネイスがしびれを切らせています。行ってあげてください」

 すると、シリウスは焦ってそこから立ち去り、メティスやナリアたちとともにパーティー会場に戻っていった。

 二人取り残された輝とアースは、夜空を見上げながら、ただ、二人で佇んでいた。どちらかが沈黙を破るまで。それはとてもいい時間で、心に降り立った安心と安定感が二人を包んでいた。集落の灯りがぽつぽつと点いていく。

「おじさん」

 沈黙を破ったのは、輝だった。

「俺、以前は安定した生活ばかり考えていました。でも、それは俺の住んでいる狭い世界でのことで、実際に世界に出てみると、そんなものは通用しないんだって理解できました」

 アースが、輝の話を聞きながら、遠い街の灯りを見ている。輝は続けた。

「いつまでも自分の作った狭い世界に閉じこもっていては駄目なんだって、思い知らされましたよ。俺、もっともっといろいろ知りたい。世界中を飛び回って、いろんな人に会って、いろんな経験をしたいんです。だから」

 そこまで言って、輝は胸がいっぱいになってしまった。これ以上言葉を出そうとすると、涙まで一緒に出てきてしまう。だから、輝は自分が落ち着くのを待って言葉を出そうとした。

 しかし、輝がそれを言うまでもなく、アースがその先を代弁した。

「輝、ついてくるならついてきてもいい。世界中のシリンたちがお前を歓迎するだろう。何かあったときに、俺もお前を頼るかもしれないからな」

 そう言って、アースは輝に笑いかけてくれた。

 その時、屋敷の扉が開いて、誰かがこちらに手を振った。ドアを覆うほどの巨体、ソラートだった。彼は二人に、中に入るように促した。

 輝とアースは、互いに互いを見て、変なところがないか確認すると、屋敷の中に入っていった。宴は、終わりに差し掛かっていた。

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