葉桜と夏草 7

 町子が手紙を読み終えると、瞳は崩れ落ちるように嘆いた。

 その瞳の肩を、ミシェル先生は優しく抱いた。町子や輝、なつや辰紀も、皆が瞳と、瞳に渡された誠一の手紙を囲んでいた。

「瞳さん」

 町子が、瞳に丁寧に語りかけた。町子には瞳の気持ちがよく理解できた。いま、町子が輝を失ったらどうなってしまうだろう。それを考えるだけでも怖かったからだ。

 瞳は、町子が声をかけてもまだ、泣いていた。しかし、しばらく泣くと、涙を拭いて、手紙を封筒にしまい込んだ。

「みっともないところをお見せしてしまいました」

 瞳は、そう言ってうっすらと笑った。

「手紙は、桜の木の下に埋めましょう」

 その言葉を聞いて、もらい泣きしていたなつが、瞳に疑問を投げかけた。

「いいんですか? その手紙をなくしてしまったら、瞳さんと誠一さんの繋がりはもう」

 瞳は、首をゆっくりと振った。

「大丈夫。誠一さんと私は心と心ですでにつながっていたの。それは今になっても変わらない。彼の愛を信じるからこそ、私は、この手紙を、あの丘の上の桜の跡に埋めるのよ」

 町子は、そんな瞳の凛とした姿を見て、羨ましくなった。

 瞳は、すごく強い女性だ。いや、人としてすでに強い。そんな風になりたかったし、輝ともそう言った関係を築いていきたいと思った。

 そう考えて、ふと、輝を見る。すると、輝は町子の不安そうな顔を見て、笑いかけてくれた。大丈夫、そう言われた気がして、町子は少し安心した。そして、安心したらなんだか疲れが出てきてしまった。

 町子が大きなため息をついて胸をなでおろすと、その様子を見ていたミシェル先生が、笑いかけてくれた。そして、こう言うと、町子と輝を激励した。

「今日はここで休みましょう。瞳さんにはここで泊めてほしいとは言ってあるので、大丈夫ですよ。そして、明日は息抜きに行きましょう。旧軽井沢でもアウトレットでも、どこにでも連れていきますから」

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