第6話

  クウェスンが話せる状態になるまで待つ。

これで誰かを待ったのは通算何回目だろうか。


 クウェスンは首を左右に振って目を覚まそうとしている。

まだすごく眠そうだが。


 ようやく「何ですか?」というクウェスンの声が聞こえた。

それじゃあ本題に入ろうか。


 何故こんな事をクウェスンに聞くのか、という事情を話す。


 「まぁ、自分も言い伝えでしか聞いたことがないけども。」

それでもいいんだ。

何かを聞かせてくれ。

間違っていてもいいのなら、という事でクウェスンは話始めた。


 いまから500年ほど前、この星は王国だった。

そして、まだ水には覆われていなかった。

そして何代目の頃だったか、この星の地下を王の命令で王国の地下を探索していた若者が突如殺されてしまうという事件があった。

何故か、それは長い間王国の民は知らなかった。

というより、隠蔽されていた。殺されたことすらも。

発見してはならないものを発見してしまったから、だそうだ。

当時の王は、国民から見ると優しかったらしいが、裏はとてつもなく恐ろしい性格なのだという。

後に分かったことを話すことにしようか。とクウェスンが。

  ある日、若者は王国のとある主要な鉱石の採掘場にいた。

王から、各種鉱石の産出量を調べておけ、という命令のためだった。

採掘場長が来るまで若者は暇だった。

暇だったら場内を採掘員の邪魔にならない程度で探索してもいい、と言われていた。

そのことを若者は思い出し、採掘場の中に入っていくことにした。


 どのくらい経った頃だろうか、若者は採掘員がいない区画に来てしまっていた。

そこは、入ってはいけない区画だった。

古代の遺跡と繋がっているから、という事らしいが若者はそのことを知らされていなかった。

そこには、とても危険な通路がある。と採掘員たちの間では有名だった。


 若者は、遺跡の奥深くまで進んでいた。

若者は、やっと今歩いているのが、遺跡の道だという事に気付いた。

だが、引き返しはしなかった。

王からの命令は、王国の地下を探索することなのだから。


 若者は、今まで進んできた道に変化があることに気付いた。

今までは石の舗装された道だったが、今は木になっている。

木の道ということは、橋なのだろうか。

下には何があるのか。

若者は気になり、道の端により下を覗いてみた。


若者は腰を抜かしそうになった。

何故か。そこには、はるか昔、世界を飲み込んだといわれている「奈落」が広がていたからだ。


 急に若者は、子供の頃祖母から聞いた昔話を思い出した。

この星の「神話」みたいなものを。


 昔な、神様たちが自分達の領土を巡って喧嘩をしてたんじゃ。

そのせいでな、緑が豊かな森や、神聖な山が崩れてしまった。

それに激怒した最上神は、空に天井を設けて神々を飛べないようにしたんじゃ。

そして「奈落」を作り、神々を闇へ葬り去った。

その後最上神は、天井の上に新たな世界を創り上げたのだ。

じゃがな、最上神でも誤算はするものじゃ。それが奈落じゃった。

奈落は、ものすごいスピードで大きくなっていた。

だから、最上神は天井に結界を張ったんじゃ。

そして完全に隔離されたんじゃ。


 その奈落が眼下に広がっている。

若者は興奮を隠せなかった。

来た道を全速力で走った。

採掘員のいる区画に入ってもそのスピードは衰えなかった。

もう若者は、王からの命令など忘れてしまっていた。


 そして見たことを本にまとめたところで、王に見つかり殺されてしまった。


というのが、クウェスンが知っている言い伝えらしい。

まぁ…朝起きてすぐに聞くような話ではなかった気がする。

自分的には神話が1番気になった。

時間があったらクウェスンと読んでみるのもいいかもしれない。

じゃなくて、その採掘場に行ってみたい。

クウェスンにそう伝えると、分からない、とのことだった。

クウェスンも地味に興味があるらしく、聞き込み調査や本屋での調査をすることにした。


 ぐぅ、とお腹が鳴る。

そういえば何も食べていなかったなあ。

クウェスンも、お腹すきましたね、と言う。

そして、流れで同じ飯屋に行くことにした。

その方がおいしい飯とか食べれそうでいいからね。

昨日のがまずかったわけではないのだが、自分だけだと限界が来そうだと思ったからだった。

毎日同じ料理を食べることになりかねないからね、僕の場合。

地球で1人暮らしをしていた頃も、それで体調を何度も崩した。

そんな深い理由も少しは関係しているのかもしれない。


 宿屋の舟着場から出て、舟の流れに逆らわず、ひたすら進む。

5分くらい進んだ頃だろうか、クウェスンが急に右に曲がった。

僕は、危うくクウェスンを見失うところだった。

朝飯食べに行くところで迷子とか洒落にならないし。

マジで。

こんなとこで迷ったら帰れる自信がない。


 そのあとは、the裏道、みたいなところを進んでいった。

店の裏口がそこかしこにある。

ドアの一部は、開いたら確実に水路にはみ出るだろう。

こんなのにぶつかったらどっちが壊れるんだか。

どっちだとしても嫌だが。

慎重に進もう、とするがクウェスンは気付かない様子で、どんどん進んでいく。

おいおい、危なくないか。

上を見てみれば、なんかぶっといパイプやらが沢山。

結構低い位置にあるのもあるから気を付けよう。

などと思った瞬間、前のクウェスンがゴンという鈍い音共にのけぞった。

ボーっとしてたらあたっちゃいましたよ、などと呑気なことを言っている。

大丈夫かよ。

クウェスン達は大丈夫でも、人間は1発人生フェードアウトだろう。

朝飯求めに命を懸けなきゃいけないなんて怖すぎる。

要注意だ。


 要注意ポイントを抜けてすぐ目的の飯屋が見えた。

やっと安全地帯に到着だ。

さて、どんな朝飯が出てくるのだろうか。

こちらは人生最高の朝飯といきたいところだが。


 席につくと、早速店員が来て、クウェスンが注文をする。

え、早くないっすか。

普通さ、席に座ってから決めるんじゃないの。

ってか、初来店のお客さんどうするんだよ。

頼めないじゃんかよ、注文。

一見さんお断りですか。

地球でもそんな店が東の国にあるとか。



次へ続く







 



  

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