第4話

 クラがお肉を食べて待つことしばし。

「いやぁ、ちょっと待たせちゃったかもね。」

と、クウェスンが出てきた。

 大盛に肉があるのだから少しくらいあげても大丈夫だろう。

クウェスンに皿を向ける。

「ありがとう。」

と、一掴み分もっていった。(めっちゃ大きいけどね)

「さぁ、行こうか。」

と言ってクウェスンが僕の舟に乗ってきた。

ずん、と舟が少し沈んだ。(気がした。)

「食べ物、もっと買おうよ。」

とクウェスンが。

「今後のことを考えようよ。」

と僕。

「そうでしたねえ。」

しっかりしてくれ。金が尽きたら大惨事だ。


 「じゃあ、まずは高水路で移動しましょうか。」

高水路とはなんぞ。僕は質問をする。

まぁ、流れの速い水路ですかね。との返答が。

こんな小舟でダイジョブか?

ダイジョブじゃない。大問題だ。

 そんな訳で新しい舟を買いに行く。

来る時に、高水路に乗れるくらいの舟の相場を聞いたが、なんとかなるだろう。

(そんなに心配なのか?足りるのか?)

クウェスンに任せておけば。(鬼か?貴様。)


 クウェスンは舟から注文をしているようだ。

地球でいったら車に相当するのにずいぶんと軽く買い物が出来るなぁ。


 数分後。

クウェスンは

「水炭を半分くださーい。」

といきなり振り向いた。

危うくお肉を落とすところだった。まったく。

クウェスンはそんな事を気にするそぶりも見せず、小さい容器で水炭をすくった。

半分じゃないけどね。(どうでもいいがな。うん。)


 それから数分後。

「ふう~。やりましたよ。グレードアップですよ。」

とクウェスンが、笑顔で振り向く。

 すぐに僕が乗っていた舟ではなく新しい舟になった。

金属でコーティングされているようだ。

クァンクァンと音がする。

さらに手漕ぎから自動に切り替わっている。

当然だろう。高水路は流れが速い(らしい)のだから。

 それになんか…2艘になっとる。

その片方にクウェスンが颯爽と乗り込む。

クウェスンの自腹か、僕の自腹か。

どっちだ、と聞くとクウェスンは君の水炭で、と言った。

結果的に僕の自腹やないかーい。

まぁ、貴重な通訳だ。

ここで僕が怒って逃げられてしまっては、たまったもんじゃない。

だが、僕の気持ちはズーンと沈む。


 これからは自分の買い物は自分の金でする、という事をクウェスンと約束した。


 それはさておき、旅再開だ。

クウェスンの先導に僕はついていく。


 高水路は、街の東側にあるらしい。

ここは、街の西端だ。

クウェスンによれば、この時間帯は一番交通量が多い時間帯らしい。

だから夜、もとい暗い時間に行こう、ということになった。

野宿が出来る訳がないから、街中の宿に泊まることにした。

一泊素泊まりで銀貨3枚だとクウェスンは言う。

ごそごそと財布を漁っていると、隣でクウェスンが革の袋を同じようにごそごそしていた。

今度は自分で払うつもりのようだ。(そうでないと困るが。)

 クウェスンは、黒く汚れた銅貨を10枚程だした。

だが、宿のおっちゃんに指を突きつけられている。

5本の指を突きつけられて、クウェスンはまた革袋の中を漁る。

あと5枚、ということだったのだろうか。

僕はちゃんと銀貨3枚を出して鍵をもらったから部屋に行くとしよう。

するとクウェスンが僕の肩に手をのせる。

僕が振り向くと、クウェスンは青ざめた顔をしていた。

きっと銅貨が足りないのだろう。

クウェスンは銅貨を出しているが、僕は銀貨だった。

銅貨15枚=銀貨3枚なら、銅貨5枚=銀貨1枚となる。

5枚足りないのなら銀貨1枚を出してやればいい。

僕はカウンターに銀貨1枚を置く。

おっちゃんは、やれやれと呆れ顔でクウェスンの分の鍵を渡してきた。

そしてその鍵を僕もやれやれ、と呆れ顔でクウェスンに渡した。

クウェスンは「いつか返しますから。」と小声で言ってきた。

返す額が増えてないといいな、僕はクウェスンに言う。

クウェスンは、頑張りますよ、と弱い返事を返してくるだけだった。


 僕とクウェスンは隣の部屋になった。


 一応何時にここを出るのかを知りたかったから、クウェスンに聞く。

「2の9時ぐらいでいいんじゃないかな。」

頭の上にクエスチョンマークが浮かぶ。

おっと、これは教えていなかったかな、とクウェスン。

じゃあ、ここの時間の表し方を教えようか、と言う。

 まず、地球でいう午前、午後が1と2で表されているらしい。

そしてそれぞれ15時間あるらしい。

だから1日が30時間、ということになるわけだ。

長い。

 ということで午後9時、ということか。

晩御飯でも食べてるぐらいの時間か。

 さすがに1泊はするだろう。

クウェスンに確認をする。

「1泊しないっていう選択肢があるとでも?」

あ、はい。

じゃあ、何泊くらいするのか。

「1週間、だね。」

ん?長くないか…って、1週間は何日あるのだろうか。

「10日だよ。」と、クウェスン。

やはり地球とは違うのか。

それにしても何故1週間も?

観光したいんですよ。私も。byクウェスン。

あ、はい。(2回目)

僕も観光はしたい。

ならば滞在するしかない、ということだろう。


 部屋は、ベッドがあるだけだ。

素泊りの宿にそれ以上の設備を求めてはいけないとは思うが。

 僕が唯一特徴的だな、と思ったのは鍵だった。

様々な形の突起が細い丸い棒にくっついている、ように見える。

実際は絶え間なく動き続けているのだが。

カシャカシャと音をたてて動く。

とても無駄のない無駄な動きだ。

それなのに鍵穴にいれると、カチッと音がして一瞬のうちに解錠、施錠をする。

なんとも不思議なこの星の技術だった。


 素泊りならば当然、ご飯は自分で用意しなくてはならない。

さっき下でクウェスンが宿のおっさんが言っていたことを訳していた時にそう言っていた。


 早速、裏の舟着場に向かう。

向かう、といっても床の一部からダイブするだけだ。

ざっぱーん。今度は足から入水することに成功した。

水しぶきが少ない。10点。(いや、とびこみじゃねーから。)

痛くないのはいいものの、抵抗が少ないから深くまでいってしまう。

鼻に入ると痛いし早く上がってしまおう。


 ざばざば。

泳いで自分の舟の近くまで行く。

そして転覆させないように慎重に乗り込む。(乗り込めー。(海賊じゃないからな。)


 数秒後には、服は乾いてしまっている。全くどうなってるのか。地球もこうなればいいのに。

あ、忘れ物した。

取りに戻らなくてはいけない。(めんどくせ。)

財布をどこに置いたか。

探すことしばし。


 やっと発見したよー。


さぁ、クラのご飯は何になるんでしょうかね。

まだまだ続きますよぉ。


 


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