第3話

 クラは出航した。


 そして驚いた。

なにせ、店が凄く密集していて見えないくらいまで続いているからだ。

商業の街、ではなく商業の国、というレベルだ。

だが、何よりも...舟の数が半端ない。

それに、曲がり角や交差点が多い。

 その中の1か所を僕は曲がっていく。

結構至難の業だったが。だって皆ぎゅうぎゅうし過ぎなんだもん。

(クラの必殺技、言い訳をする。)

まあ、漕いでいると物売りが色んなのを売ってくるのが楽しかったが。

まあ、当然のごとく断ったが。

 今更だが金には困らないだろう。

何故なのか?それは、説明しないでおく。

面倒だからね。

(ん?どこかで聞いたことがあるような...)


 それよりも何を求めて僕はうろついているのだろう。

やはり、食べ物関係だろうか。

宇宙船の携帯食料は、もう飽きた。

あんな冷たい飯なんか毎日食べてられるか。

暖かいのか、新鮮なのを食べたい。

ゲテモノかは別としてだが。


 何となくいい匂いがする通りに向かうことにする。

甘い匂いや、香ばしい匂いなど。食欲が刺激される匂いばかりだ。

あと、言葉に表せないような匂いも漂っている。

地球では見たこともない料理の数々が、僕を待っていることだろう。(待ってません)


 僕の嗅覚で探りあてたのは、いかにも’The お肉’って感じのものを売っている店だった。

ケバブみたいな感じに肉をそぎ落として売っている。

しばし見ていたのだが1つ気になることが。

一口が大きい。明らかに人間のサイズじゃない。(当たり前だろう。地球じゃないのだから。)

だが、努力すれば食べきれないサイズでもない。


 それと貨幣は皆それぞれだった。

綺麗な金貨1枚だったり、薄汚れた銅貨を10枚くらいだったり、僕の掌ぐらいの銀貨だったり。

どれも、店主がじっくり眺めてから何枚もらうかを決めているようだ。

払われている貨幣もだが、払っている人(?)も様々だった。

この調子なら、僕が払っても大丈夫だろう。

ちょっと色が白いくらいで済むといいのだが。


 注文方法は、喋るか指をさすの2種類が大半だ。

さっき、ここに来るとき物売りを断ったのも身振りだったから心配なしだ…ろう。


 ん、と言って肉を指さす。

店主は、刀(らしきもの)でジャキジャキと肉を切り始めた。

そしてふにゃふにゃしたガラスのような容器に盛る。

こちらも、ん、と言って出してくる。口がニヤリと笑っていた。

遊び心があるなあ。と勝手に決めつけてしまう。

店主はやけに小さい手を出してくる。

そこに銀貨5枚を載せる。(自腹です)

他の客の時と同じように、硬貨を眺める。

そして1枚返してくる。

どうやら4枚で足りたようだ。

それにしても、珍しいなぁ。という目で見ている。

さっきも銀貨で支払いをしている人(?)は、いたのに。

なんなら、と金貨を手渡す。

はっ、と息をのむ。(店主が)

よっぽど何かがあったのだろうか、深くお辞儀をする。

そんなにすることはない、と僕は首を振りその場を去る。


 さっき僕が払ったのは、地球だと安い部類に入る銀貨だ。

それが4枚で大盛肉と綺麗な食器が買えたのだ。

高い部類に入る金貨などで払ったらどうなるのだろうか。

それと、この星の最高額の貨幣を見てみたい。

まさか独自の貨幣が無い、なんてことはないだろう。

どんなデザイン、材質なのだろう。


 ここは水の都だが、陸地は無いのだろうか。

それとも地下空間があるのだろうか。


 そんな疑問を抱きつつ、街を散策する。

あめらしきものを売りつけてくる物売りが、特に多かった。


 思ったのだが、鉱石を売っている所や、宝石商に行けば見れるのではないか。

貨幣でなくても材料が見れれば十分だ。

金属で出来ているのだろうか。

はたまた、ここでしか取れない鉱石を使ったりしているのだろうか。


 うろうろすること約20分。

石らしきものが置いてある店を発見した。

早速近くにいってみることにした。


 店主がボーっと虚空を見つめている。

その前で手を振ると、店主は慌てて椅子に座り直した。

ンゴ、と咳払いを1回した。

僕は、透明なようでいて表面が光を反射している液体に目がいった。

そのバケツを指さすと店主は慌てた様子も見せずに、ゆっくりと腰を上げた。

慌てるんだったら、今も慌てろよ。

ふうふう言いながら持ってきた。

持ってくのが面倒だから遅かったのか。納得。

店主は、触れ、とでも言いたげに僕の手首を掴みバケツの近くに持っていく。

フワァリ、というような感覚だった。

手に取ってもっと触ろうとしたら固まってしまった。

僕が感心していると、溶けてしまっていた。

どっちなんだ。はっきりしろ。

 まぁ、要するに衝撃をあたえたら固まるらしい。

地球でいうダイラタンシー現象が起こる物質のようだ。

綺麗だなぁ、と呟く。

すかさず店主が、買いますか。と言ってくる。

驚いて肉の食器をひっくり返すところだった。

まさか地球の言語が分かるとは。

なんで分かるんです?と僕は質問をした。

返答に更に驚いた。

「私は、***(聞き取り不可)なんです。地球とここの。」

 要するにハーフ、みたいな感じなのだろう。

 さらに店主は続ける。

「私の祖父にあたるのが地球の人でした。祖父は、***(国名らしいが聞き取れなかった)の宇宙飛行士だったんですよ。」

でもなぜここに?と言おうとすると、

「不時着したらしいですよ。」

と言った。

 大変だっただろう。


 それから話は盛り上がった。

祖父はどんな人だったか、どう馴染んでいったか、などの話を聞いた。


 最後に店主が一言。

「通訳、私がやりましょうか?。」

是非ともお願いしたかったから、お願いします、と言った。

ですが、と店主が言う。

「通訳をする代わりに、ですがこれを買ってください。」

そう言って差し出したのはさっきのバケツだった。

不思議な液体(?)入りのヤツだ。

「これは、水炭(すいたん)という鉱物ですよ。」

炭だったのか。あんなにキラキラしているのに。

「金貨50枚でどうでしょうか。お買い得ですよ。」

手持ちはまだあるし大丈夫だろう。

「じゃあ買います。」

「ありがとね、じゃあ店をたたむからちょっと待って。ちなみに私はクウェスンといいます。よろしくお願いします。」

クウェスンさん、お店をたたむのか。だがまぁ、いつ終わるのか分からないなら妥当だろう。

水炭バケツが渡される。オモッ。

改めて思う。いい人(?)に出会えた、と。

 お肉を食べながら待つ。

色々荷物をまとめるだろうから結構時間がかかるだろう。

せっかくだから水炭で遊ぶことにでもしよう。



 さあ、これからクラ君はクウェスンとどこに行くのだろうか。

お楽しみに!


 


 



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