セキセイインコのおままごと。

(※この話には、途中セキセイインコが餌付けをするような場面が表現されています。苦手な方や、気分のすぐれない方、またお食事中の方などにはオススメができませんので、どうかご了承下さい。)



◇◇◇



むむ母から溺愛されまくっていたセキセイインコのチュン三郎は、むむ母から沢山のオモチャを買い与えられ、それを小さなオモチャカゴの中に入れて管理していました。


むむ母からの溺愛ついでに、6畳一間の部屋を与えられていたチュン三郎は、朝7時に自分の鳥カゴから外に出ると、自分が眠る夜8時くらいまで毎日この部屋で放し飼いをされていました。


チュン三郎は朝起きたらすぐに、むむ母が取り替えた餌と豆苗を自分の気が済むまで食べに食べまくり、その後鳥カゴの外に出て自分のオモチャカゴの中に入った指人形達を一つ一つくちばしでくわえては外へと出し、それらを次々と床の上に並べていくのです。


そしてその床の上に乱雑に並べられた指人形達の周りをウロウロと走りまわりながらブツブツとこう言うのです。


『チュンちゃん、お菓子いりますか~?』


『ハイ、いただきます。』


もちろんその指人形達の中には、言葉を発する事ができる者など一人もいません。


そうです。

これらは全てチュン三郎の一人芝居であり、毎日決まって開催されているセキセイインコのおままごとなのです。


多分、ここで使用されている言葉は、普段むむ母達が使っている言葉を真似しているのでしょう。


その証拠に、チュン三郎はその指人形達の周りを忙しそうに走りまわりながら、よく指人形に向かってこう言っていました。


『…ちょっと待っててね~!ちょっとお仕事行って来るからね~!』


…と。


無職でインコの癖に、まさかの働いているフリです。


この件に関しては、もはや経歴詐称と言っても過言ではないでしょう。


そしてひととおり転がっている指人形達の見回りが終わると、その日にお気に召した人形を見つけては、その人形の顔に向かって突然自分の食べた餌を吐き出しはじめるのです。


…彼はただの餌付けのつもりなのでしょうが、その姿はまさに地獄絵図。


まるで『村人から生け贄を捧げられたモンスターがおこなう鬼畜の所業』のような光景なのでありました。


そしてチュン三郎は、お気に入りの指人形の顔にもっりもりに自分の餌を吐き出しまくると、またもやその人形達の周りを忙しそうに走りまわりながら言うのです。



『…クサい!クッサぁ~い!!』



すると、そのチュン三郎の声を聞きつけたむむ母が、わざわざその指人形達を拾っては毎回洗面所まで持って行き、またチュン三郎が遊べるように丁寧に丁寧に洗いに行くのです。


…自分でやっておきながら、クサイってなんだよ…。


毎朝この恐怖のおままごと大会が開かれる度に、そう思わされてしまうむむ山むむすけなのでありましたとさ。

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