だから興味ないってば。


仕事中。

その日のむむはとても忙しかった。


書類作成の為にパソコンで

カタカタカタカタカタカタカタ…


まさにタイピング無双です。


『このまま打ち続けても、

時間ギリッギリやな。』


時計を眺め

そんな風に考えながら

仕事を続けていると、


「野球、興味ある?」


突然目の前に座っていた

男性職員に話かけられました。


野球…!?

まだ仕事中だというのに

何故に今突然に…野球!?


その男性職員は

普段はどちらかというと寡黙な方なので

むむはほとんど話した事が

ありませんでした。


「えっと…野球は…

ルールも知らないレベルっスね。」


愛想笑いを浮かべてそう答えると、

むむはまたパソコンを

カタカタと打ちはじめました。


野球のルール?

もちろんそのくらいは

むむだって知っています。


…が。


ここで「興味ある」とか「知ってる」的な事を言ってしまえば即座に「どこのチームが好き?」とか「どの選手が好き?」などという無駄な会話のアルゴリズムが発生してしまう。


…今は野球の話など

している場合ではない…!!


そう考えたむむは苦肉の策で

野球の話題ごと綺麗さっぱり

光の彼方に消しさってしまう作戦に出たのです。


『これで仕事に集中できる…!!』


むむがそう思った瞬間…


「よく野球のバットは

ハンマーみたいに振れっていうじゃない?」


と言葉を続けるその男性職員。



ふぬおぉぉお~~

全力で拒否したというのに

何故にお前は話を続けるかぁぁぁぁっっ!!


光の彼方に追いやったハズの野球の話が

なんと豪速球で帰ってきたではありませんか。


そんな彼の言動に多少驚きながらも


「だから野球興味ないんですよ。

…ってか私が忙しそうなの、

見て分かりますよね?」


やんわりとそう言ったむむの笑顔は

すでにひきつっていたと思います。


それでも気にせず言葉を続ける職員さん。

清々しいほどむむの意向をガン無視する彼の独壇場に、ついにはむむの作業の手も止まってしまいました。


「いつもいつもハンマーのように振れ、

ハンマーのように振れって言われ続けてさぁ…ずっと意味が分からなかったんだけど、

何回もバットを振っていくうちにやっと

『あぁ!こういうことか!』って

分かったんだよね~…………


…7年前に。」



………………………………。



「…って最近の話じゃないんかいッッ!!」


思わず無視する事も敬語であることも忘れ

全力でツッコんでしまったむむ。


この日ほど

時間を無駄にしたなと感じた日は

ございませんでしたとさ。


…ってか、

真面目に聞いて損したわ。

貴重な時間を返してくれ。

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