フェーズ2

019 アニマ・ムンディ

 アニマ・ムンディ オープニング バージョン2.65


 周囲は流動する闇に包まれている。

 光はなく、自らの姿は闇と同化し境界はない。

 完全な闇の向こうに、一筋の光が現れる。

 ただ、吸い寄せられるように光のほうへと歩きだす。

 すると、周囲から男とも女ともつかない声がする。

 

 ――届いているだろうか。

 聞こえているだろうか。

 見えているだろうか。

 この願いが、呼びかけが、私の姿が。


 かつてこの星に生まれた、祖なる器よ。

 かつてこの地に満ちた、真なる器よ。

 いまこそ目覚めのとき。

 いまや、この星に座するふたつの神は、互いを滅ぼさんとあぎとを開けた。

 拮抗するふたつの力が交われば、この星が打ち砕かれるは必定。

 この歴史が行きつくは滅びへの道。

 すべては消えうせ、劫年ごうねんの果てにも再帰は果たせぬ。

 失われるものはあまりにも多く、あまりにも尊い。

 

 祖なる器よ。

 真なる器よ。

 正しき道へ――


 ノイズ...

 ...眩暈...

      ...暗転...


 いつのまにか、水の中を漂っている。

 どちらが上で、どちらが下かも分からない。

 右からも、左からも、日の光が射している。

 同時に、左右から輝く腕が伸びてくる。

 湧き上がった泡は、それぞれ左右へと昇っていく。

 輝く腕は、それぞれ自分に掴まるよう促がしているように見える。


> 左の腕へ視線を向ける。


 水面にうっすらと景色が映る。

 明るく平らかな草原に、整然と整理された町並みをもつ都市が見える。

 都市は活気に溢れ、行き交う人々から笑顔が絶えることはない。

 古くからこの地に眠る、祖先たちの霊を崇め、讃える彼らは、始祖帝がその身に宿したとされる大霊の守護の元、平和を謳歌している。

 都市には、日差しを反射して輝く白亜の宮殿が建っている。

 玉座には王冠を被った若い女がひとり、座っている。

 深紫の輝く髪の下で、女は感情の読み取れぬ笑みを浮かべている。

 この国を統べる、霊帝れいていである。


 『霊帝の国』と、この国は呼ばれている。


 いくつもの文字が、縦横に乱れ飛ぶ。それらがこの国を構成している。

 太陽/不滅の国/アールディランド平原/我ら1つの霊より生まれた/アメジスト/規律/炎と氷/霊帝ディンドラ/分界/ナブディ銀鉱山/草原の中の国/地に満ちる霊の断片/機械と進歩/大霊たいれいネブカドネザル/女帝の国/死とは大地に宿ること/


> 右の腕へ視線を向ける。


 水面にうっすらと景色が映る。

 山々に囲まれた深い森の中に、秘密めいた気まぐれな町並みをもつ都市が見える。

 都市は活気に溢れ、行き交う人々から笑顔が絶えることはない。

 古より王たちがその身を捧げた、夜空に輝く数多の星々の守護の元、それらを崇めたたえる彼らは、平和を謳歌している。

 都市には、星空へと熔けていく尖塔を持つ、荘厳な神殿が建っている。

 玉座には王冠を被った、たくましい老人がひとり、座っている。

 隣には、輝く金色の髪を持つ青年が、感情の読み取れぬ笑みを浮かべて立っている。

 この国を統べる、星王せいおうとその王子である。


 『星王の国』と、この国は呼ばれている。


 いくつもの文字が、縦横に乱れ飛ぶ。それらがこの国を構成している。

 月/永劫の国/ルバーシカ大森林/かつて分かれた星の子ども/アンバー/道徳/風と雷/星王アンティオクス/分界/コグン禁猟区/深い森の国/空に映る星の雫/自然と共生/外天げてんコルーサー/若王の国/死とは星に混ざること/


 どちらの手を取るか、選ばなければならない。


 【左<霊帝の国> / 右<星王の国>】

 

 左の手を取る。

 右の手は戸惑ったような仕草をしたあと、名残惜しそうに消えていく。


 泡...

 ...上昇...

      ...光...


 【タイトル表示】

  ――アニマ・ムンディ――


 どことも知れない場所であなたは目覚めた。

 あなたは、自分が何者なのか、自分がどうしてこんな場所にいるのか、全く思い出すことができなかった。

 ゆっくりと身体を起こすと、自分が棺桶のようなもので横になっていたのだと知る。

 棺桶は、とても広い部屋の中央に置かれている。

 四方の彼方に、うっすらと青い光に照らされた壁が見えた。

「目覚めたか、不老の異邦人よ」

 いつの間にか、隣にローブを纏った男がおり、しわがれた声で言った。

 男の手には、壁を照らしているのと同質のものと思われる、青暗い炎の灯ったランプ。それによって、辛うじて男には長く白い髭がたくわえられていることが分かる。表情は一切分からない。


「自分の名前が思い出せるかな、不老の異邦人」

 男――おそらく老人だろう――が問う。

 あなたは、不意に思い出すことが出来た自分の名を告げる。


 あなたの答えに老人は深く頷く。

 続いてランプを頭上へ掲げる。すると、頭上には天井がなく、かわりに巨大な穴が開いていることが分かる。

 穴の先がどうなっているのかは分からない。

 穴の側面にはへばりつくように階段がついている。

「ここは霊帝の国の地下深い場所。大霊ネブカドネザルの眠る墓所」

 老人の言葉に反応して、眠っていた棺を中心にして床を青い光が照らしていく。

 鈍く光る床はガラスのような材質でできており、さらに下に巨大な空間が広がっていることが分かる。

 遥か下方から、強大な力のうねりのようなものを感じる。

「そなたは、大霊に導かれ、ここへやってきたのだ」


「そなたが果たさねばならぬことは、ただ一つ。偽りの空で民を惑わす、醜き偽天の神を葬ること。しかし今のそなたではまったく力の及ばぬことであろう。まずは同じように目覚めた不老の異邦人たちと共に、力を蓄えねばならない」

 老人は一歩下がる。

「何を成すにしても、まずは、そなたの特性を見極めねばならない」

 あなたは立ち上がる。


【個人特性の選択】


 選択を終えたあなたへ、老人は、目覚めたばかりの力の使い方について手ほどきを加えてくる。それによって、あなたは少しずつ自分を取り戻していくだろう。

 そんなあなたの眼前に、老人は3つの宝石を提示する。

「それらは、まだ力弱きそなたへ、この世界に在る恐るべき呪物に対抗するための加護を与えるものである。さあ、1つ選ぶのだ」

 3つの宝石はそれぞれ、以下のようなものである。


【救済アイテムの選択】

 グルーセア/アンブシンチウム/ケンタウリウム


 1つを選択すると、他の2つは消えていく。


「それでは、そなたを地上へ送ろう」

 老人がそういうと、あなたを光が包みこむ。

「不老の異邦人よ。必ずや、必ずや、憎き偽天の神を――」

 老人の声は途中で途切れ、あなたの視界にうつる景色が切り替わる。


 きがつくと、あなたは小さな湖のほとりにある祠の近くに立っている。


 ――あなたは老人の言葉を胸に、謎に満ちたこの地で、冒険の旅を繰り広げることになる。


【更新履歴】

バージョン2.65 

担当:柄崎

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