第7話


「…これ、いつもの」


 お母さんは白い封筒をかつひこに差し出した。中身は聞かなくたってわかってる。お母さんは毎月こうして、私たちにお金を渡す。

 子どもを産むって大変ことだ。可愛くなくったって、愛情がなくなったって、半永久的に面倒を見なければならないんだから。


「多めに入ってるから。これでまこに、新しい服でも買ってあげて。このワンピース、もう何年も着てるやつでしょう。肩のところが色褪せてる」

「ほんとだ。気づかなかったよ。どうも、ありがとう」

「靴のつま先のところも、穴が空いてたから。これじゃ、雨の日に外を歩いたら水が入ってきちゃう。アニメキャラクターのリュックも、小学生中学年には、ちょっと子供っぽすぎるわ」

「そうだね。ありがとう、気をつけるよ」

「それから」


 ぎゅうっと強く握りしめられた手のひらから感じる体温が気持ち悪くて、私はつい顔をしかめた。私の変化に誰よりも敏感なかつひこは、「まこ、大丈夫」と小さな声で言ったけれど、お母さんの耳にその声は入らなかったようだった。


「ひとつだけ、あなたに、お願いがあるの」


 お母さんは子どものように、大きな瞳からぽろぽろと涙を零した。かつひこはようやく、心配そうな顔をしてお母さんを見た。お母さんは無意味にも、もうここにはいない小さな私のことを、懸命に守ろうとしていた。


「そろそろ、この子と一緒にお風呂に入るの、やめてください」


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