7.Unknown truth


祐樹はとある施設の前室で待たされていた。

あの戦いの後、オーバーシアと一緒にどこかに転送され、ここまで案内された。

ここがどこなのかは分からない。

それよりも祐樹は未だに今の現実が受け入れきれず、ボーッとしていた。


部屋のすみっこの椅子に座り、ボーッと天井を眺めていると、ドアが開いた。


「こちらへ」


女性にそう言われ祐樹は立ち上がる。

その女性の後ろをついて行くと、大きな扉の前に着いた。


「ここは…?」


「まぁまぁ、とりあえず入って?」


女性は優しく微笑み、ドアを開ける。

ドアから中に入り、顔を上げると、そこにはデスクの奥の

椅子に座った中年男性と先ほどの緑色のロボットに乗っていた男。


「やぁやぁ、来てくれてありがとうね!」


そう言い椅子に座っていた男は立ち上がり、祐樹に近寄る。


「まぁこの短時間にいろいろあって混乱してるとは思うけど、無事で何よりだったよ。」


男はデスクの前まで来ると、もたれかかった。


「君がさっき白いのに乗ってた少年だね。名前はー…」


「伊藤祐樹です。」


「伊藤くん!助かったよ!彼の機体が戦闘続きで十分なメンテナンスが出来てなかったからね!」


「いや僕はただ…」


祐樹は一度うつむくがすぐに顔を上げる。


「それよりも…俺が戦ったあいつらは…一体何者なんですか…」


祐樹は自分でも不思議なくらい冷静だった。

これと言って熱くなるわけでもなく、ただ淡々と気になることが自然と出て来る。


「あーあいつらかい?あいつらは…」


そういうとデスク上のパソコンでなにか操作する。

すると天井から大型のモニターが降りて来た。

画面にはさっき戦ったものとは違うロボットが多数映って、真ん中に若めの男性の顔写真。


「"アグノ"そう呼ばれている、我々の"敵だ"」


「敵…?」


祐樹は画面を見つめながら聞く。


「そう、世界征服を企む連中さ」


「世界征服って…そんな…」


「漫画じみたこと、そう思うだろ??でも本当に彼らは世界征服を企んでる…。」


モニターの画面が変わり、そこには某国の戦争の様子などが映し出される。


「公にはなっていないがこれ全部が彼らの仕業だ。」


「これ全部が…?」


映像を見て唖然とする。


「彼が作り出したものを実験的に国に売り、それでデータを集めてるっていうわけだ。」


リモコンでモニターの電源を切る。


「それはやがて大きな戦争へとなるかもしれない。それを秘密裏に阻止しているのが我々だよ。まぁそれも虚しくバレてしまったけどね」


男は笑って言った。


「阻止って…あんたら一体…それにここは…」


「あれ?そういえばまだ言ってなかったね。」


「我々はインペリアルエネルギー管理局本部の職員。そして…」


部屋の明かりが急に明るくなる。そしてその光景をみて祐樹は圧倒される。


数々の巨大なロボット。多くの緑色のロボ、その中には緑川が乗っていたもの、奥には自分が先ほど乗っていたものも。


「特殊状況下特別任務執行部、通称CORRECT(コレクト)だよ。」


「私が管理局長そしてコレクト司令、澤田明典」


「私が執行部隊長、緑川颯」


「私が秘書の上内春香です。」


それぞれが自己紹介をする。


「コレクト…。正す…者…。」


知らなかった事実を突きつけられ、混乱しだす祐樹。


「まぁ難しい話はこれぐらいにして、もう夜も遅い、今日は帰って休みなさい。」


澤田が気を使うかのように祐樹に促した。

そう言われ整理はできてはいないものの祐樹はお辞儀をし、上内と部屋を出ようとする。


「あ!その前に!」


澤田が引き止める。


「ここの医務室に行きなさい。待ってる人がいるよ。」


待ってる人?そんなひとどこにも…

祐樹はまさかとハッとなり、場所も聞いてないのに走りだす。


「あれ…まだ医務室の場所言ってないんだけど…大丈夫かな…」



案の定祐樹は迷っていた。しかしそんなことはどうでもよく、ひたすら探し回る。

そしてようやく見つけた"医務室"の文字。

ドアノブを掴もうとするが緊張で手が震える。

意を決してドアを開ける。そこに体を起こしてテレビを見る"彼女"の後ろ姿。


「茜…?」


そう呼ばれた彼女は振り向いた。


「あ!祐樹だ!」


綺麗な顔の小さな傷は目立つものの、そこにいたのはなにも変わらない彼女。

変な意地を張って、冷静なふりをする。


「お前…元気だな…」


そう言いながら近づき、ベッドの横にあった椅子に座る。


「さっきまで雄二いたのに!遅いよ!」


「悪い悪い、いろいろしててな」


その後もいつも通りの他愛ない話をする。


「でも…ほんとに無事でよかったよ…」


祐樹が俯いて言った。


「え??そんな、気にするほどでもないよ!!大きな怪我は無かったし!明日までここにいないとだけど、すぐ退院できるって!」


「いや…俺のせいなんだよ…」


「祐樹の…?」


嫌われる覚悟で話す祐樹。


「あいつは…あの怪物は…俺が起こしたんだ…」


茜は何も言わずただ俯く祐樹を見つめて聞く。


「あいつは俺を狙って学校に来たんだ。俺がいたから学校も…みんなも…茜も…」


「全部…俺のせいなんだ…」


「でも誰も怪我しなかったんでしょ?」


そう言われて顔を上げる。


「私もこうして生きてる。何があったのかわからないけど雄二も言ってたよ?祐樹が守ってくれたんだって」


その優しさに思わず目頭が熱くなる。


「俺は…」


「もう!!ウジウジしすぎ!雄二に昔のかっこいい祐樹に戻ったって言われたのに!また性格悪い祐樹だよ!」


「ちょっ、性格悪いって…」


また茜の優しさに救われた。

俺はこの優しさを、雄二を、みんなを守らないといけない。

たとえ俺が死に直面してでも…。


笑顔の下でそう強く思う祐樹だった。


「そろそろ帰るよ。明日迎えに来るから。」


椅子から立ち上がり、部屋から出ようとする。


「祐樹…」


名前を呼ばれ、立ち止まる。


「気にしないで…私は…その…、腐っていても…みんなのために…そんな祐樹が…」


「ああ。助かったよ。ゆっくり休め」


何か言おうとしたのを制止するかのように言った。


そして部屋を出て行く。


つぎの日、雄二と2人で迎えに行き、3人で仲良く帰った。









日本海。海上。


巨大な船がそこにはあった…。


船内の一室で"彼"はチェスの盤をいじっていた。


「準備も進んで来たな。さて、挨拶ぐらいはちゃんとしとかないとね。みんな」


その一室で、それぞれのことをしていた数人が、その男を見つめた。





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