4.Again



「こちらオーバーシア、民間人2名確認。最優先事項を更新する。」


「了解、最優先事項を"目標の破壊"から"民間人の保護"に更新します。」


オーバーシアのコックピット内で、緑川がコントロールセンターと通信を取る。


敵の方を見ると、落ち着きを取り戻したのかこちらを睨んでいた。


「また変なモノ作ったもんだな。」


オーバーシアは敵の方に向き直し、戦闘態勢をとる。


緑川は素早く機器を操作し、スピーカーモードにする。


「そこの少年たち、走れ。遠いところまで離れていろ」


ロボットから声がして祐樹たちはびっくりする。


「あんたは味方なのか!!」


雄二が大声で聞く。


「お前たちの様子次第では敵になる。」


は??


祐樹が思わず声を漏らす。


その瞬間、敵が再び2人の方を向き、雄叫びを上げ突っ込んでくる。


すかさずオーバーシアが反応し、抑え込む。


「いいから今は逃げろ!!ここは危険だ!!」


「わ、わかった!!!」


2人は元来た場所へ走り出す。


オーバーシアを振り切った敵は、2人を追う。


「しつこいやつだな!!!」


敵の襟元を掴み、そのまま振り下ろし地面に叩きつける。


だがすぐに立ち上がり再び追おうとする。


オーバーシアは首を腕で締め上げる。


「おい、聞いているか。これが"貴様ら"の最新機か。」


しかし反応はない。


「ふん、遠隔タイプって訳か。ならば心なく破壊できるな!!」


首を絞めた状態で再び投げ倒す。

そしてそのまま足で押さえ込み、腰から銃を取り出し、銃口を額に当てる。


「死ね」


そのまま引き金を引き、乱射する。


頭部を派手に破壊された敵は、目の光を失い、うごなくなった。


それを確認したオーバーシアは立ち上がる。


「こちらオーバーシア、敵の殲滅と周囲の安全を確認。」


「こちらコントロールセンター。こちらでも確認、回収部隊を派遣します。」


ひと段落ついた緑川は、座席に寄りかかり、ため息を一つつく。


「…さて、あいつらを探しに行くか。」


コックピットハッチを開け、オーバーシアの胸元から飛び降りる。


そして探しに行こうと歩み出そうとすると木陰から2人の顔が見えた。


「…おい、逃げろと言ったはずだ。」


バレた!!と雄二の声がするのと同時に2人が出てくる。


「あんた何者だ…、それにあの高さ…普通なら死んでるぞ。」


祐樹が聞く。


「君たちには関係ない。それよりもいくつか話がある。」


緑川は2人に歩み寄る。


「私は緑川颯…、敵ではない。」


「俺は…」


「君たちは名乗らなくていい。これは敵ではないという証明だ。」


雄二が名前を言おうとしたところを制止する。


「なにやら君たちを狙っていたようだが、なにか理由は?」


「いや…、心当たりは…」


祐樹が返答する。


「そうか、それとここはフェンスで禁止していたはずだが、なぜこんなところに?」


「まぁその…秘密…」


雄二が小さな声で答える。


「なんだって?」


聞き取ることができなかった緑川が聞き直す。


「ここに昔の俺たちの秘密基地が」


それを聞いて緑川がキョトンとする。


「あ、そ、そうか。それと若気の至りか。」


「ま、まぁそんなところです。」


雄二が苦笑いで答える。


「それだけ聞ければ十分だ。最後にだが…」


緑川は振り返る。


「君達も思ってることだが、今見たのは極秘だ。脅しではないが、口外すれば相当の処分を与えることになる。こちらもまだ若い君達に、未来を断つようなことはしたくない。よろしく頼むよ。」


そう言い残し、オーバーシアに歩み寄る。


はっとなり祐樹が緑川に聞いた。


「あんたらは一体何者だ!!」


「ただの世界の安定を望むものだよ」


オーバーシアが手を下ろす。

それに乗り、再び2人の方を向く。


「迎えが来る。来た場所に戻って待て。」


そう言ってコックピットに戻り、ワープするかのようにいなくなった。


「なんなんだよ…」


雄二が上空を見上げたまま呟いた。


「まぁ…戻るか…」


祐樹がそういうと2人は歩き出した。


森を抜けると一台の車が待機していた。

中にいた運転手に乗せられ、帰宅した。





場所は変わり格納庫。


帰還した緑川がコックピットから降りてくる。


「おつかれさん!!」


「ありがとうございます。おかげさまで」


「ほめてもなんもでないよ!!」


他愛ない会話をしながら、急ぎ足でそこを出る。


そしてすぐに局長室へと来た。


「失礼します。」


開いたドアでお辞儀をする。


「うん、入って。」


さっきののほほんとした局長はいなく、真剣な表情でデスクのモニターを見る局長がいた。


「モニタリングしてたよ。しかし謎だね。」


「はい、座標も例のモノと全く一緒です。おそらく同一のものかと。」


緑川もデスクに歩み寄る。


「もしかすると敵が新型の兵器を使用したのでは無いかと。電波障害のパルスを使って反応を消したとか。」


「たしかにそれも考えれるね。でも一番きになってるのはさ。」


局長が両肘をついて手を組み、顎を乗せる。


「突然起動したというよりも、"何かを待ってた"かのようなんだよね…」


「何かを…?」


「まぁ、その何かがわかんないんだけどね…」


ビビー!


局長室に通信が入る。


「こちら回収部隊。」


「うむ、どうした。」


「いや、あの…対象物が見当たらないんですが…」


それを聞いた緑川が眉間にしわを寄せる。


「なんだと?確かに無力化したはずだ!」


「と言われましても…」


「完全に弄ばれたって訳だね…我々は」


「申し訳ありません。」


緑川が頭を下げる。


「いや、確かに一度反応は無くなってる。向こうにしてやられたって事だよ。とりあえず、現在地がわからない今どうしようもないから、今日は休みな」


「わかりました。」


緑川はお辞儀をし、部屋を後にした。



翌日、祐樹は普通に登校した。

確かに精神的に多少の疲れがあったが、理由が理由だったため、休みたいとは言えず重い身体を無理やり起こして、登校してきた。


「おはよう雄二」


「おう!おはよう!」


自分の机に荷物を置き、雄二のもとに向かう。


「来たんだな。」


「まぁな、なんか上手い言い訳思いつかなくて」


雄二が笑っていう。


「昨日は大変だったな。帰ってすぐ寝たよ。」


「俺も俺も。でもまぁこうして生きてるしいいかなって!あとそういうとの好きとしては嬉しかったし。」


「ポジティブだな。」


「なになに!!なんの話!」


話していると突然割って入って来た女の子。


「おー!茜!!おはよ!!」


「おはよー!!で!なんの話!」


この元気な少女は木之本茜。この少女も幼馴染の1人である。

クラスのみならず学校で一番人気があり、いわゆるマドンナというやつだ。

そんなマドンナと仲がいい2人は男子から怖い視線を…というわけではなく、なぜか何かを通り越して執事という謎のレッテルを男子から貼られていた。


(ちなみに雄二は、アメリカ人の母を持つハーフで生まれつきの綺麗な金髪、丹精な顔付きのおかげで、女子から王子様と呼ばれてる。祐樹は一般人。)


「んー?昨日雄二と2人で秘密基地行って来たんだよ。」


「え!?私聞いてないよ!」


「お前昨日休んでたろ。ていうか風邪大丈夫なのかよ」


「うん!大丈夫だよ」


茜が鼻水をすすりながら答える。


大丈夫じゃねえじゃん…と呟く祐樹。


「でもな、見つかんなかったんだよな。流石に無かったわ。」


雄二が笑いながら言う。


「そうだったんだ。あ、今日さ、病み上がり記念にパフェ食いに行こパフェ!」


「お前元気だな。」


それから他愛もない会話をしていると、始業のチャイムが鳴った。


そしてまたいつもの1日が始まる。







時間が経ち、午後の授業の時だった。


教室内にはチョークと黒板が擦れる音と、生徒たちの執筆の音、たまに茜の鼻水をすする音が響いている。


そんな普通の景色の中、窓際の席の祐樹はボーッと外を眺めていた。


昨日のことが忘れられずにおり、そのことばかりを今日は考えている。


あんなものが…ほんとにこの世に存在してるのかよ…。


「伊藤!あ、祐樹の方な」


そんな事を思いながら外を眺めていると、先生から指名される。


黒板に書かれた問を解こうと席を立った瞬間、大きな衝撃が教室をおそい、大きく揺れる。


地震か!?などの慌てる声が教室内に響き、次第に学校全体が騒がしくなる。


その揺れもすぐに収まり、教室が安心の声で包まれる。


しかし祐樹は異変に気付く。


あれ??教室なんか暗くないか?


そう頭で思った瞬間、クラスメイトの女子の1人が悲鳴をあげる。


教室にいる全員が彼女を見ると、どうやら窓を指差している。


恐る恐る窓を見ると、中を覗く"知っている"赤い一つ目。


「…は?なんで…」


その赤い目は、目の前の祐樹を見つめていた。












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