最終話「√召喚術式」

「理屈としてはそう。空いた穴に対して、こちらからまず糸を通して、今度は向こう側から糸を通したの。必ず魔法陣のところで揺れ戻しをしたのはそのため。これで、線がつながって、不安定な召喚で溜まる歪な反動を扉の形で仮留め。あとは日に1回行き来する。それで溜まった力を解消してやれば、破綻せず行き来ができる。これが新しい、私だけの。名付けて“ルート召喚術式”」


 私は柊の部屋で得意気に説明をしていた。狭い部屋の台座机の上に、天井近くまである扉が浮いている。

 これまでの召喚術は点を持ってきておしまいだった。それに対しこちらは点と点を結ぶことでルートを固定化している。


 反動を溜め込み、それを暴発しないよう、しかも有効活用する術式は、数々の失敗召喚を抑え込んできた私だからこそできた芸当で、素直に褒めて欲しい。


「へー、ほー。それで、なんでルニが今日も俺の部屋にいるんだ」

 柊は退屈そうにドルテの一部で補ってある右手を振っていた。うん、大丈夫そうだ。


「しゃわーを浴びに来たの」

「浴びに来たの、じゃねー! 異世界を何だと思ってんだ」


 怒られた。召喚士にとって、その世界のことを研究し体験するのは非常に重要なことなのに。

 そう、だから今日もしゃわーを浴びるのだ。あと、学校というのにも行ってみたい。この異界には興味深いことが山ほどあるのだ。


 だから、毎日のように私がこちらに来ても問題はない。

 そうでしょう? ひいらぎ――。

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