帰り方を探そう
でも、じーちゃんも、ばーちゃんも、行方不明になったりはしなかった。だから、たぶん『帰る』方法はあるはずなんだ。ゴリさん側のトリガーが『夜』と『霧』であるように、私達の側にも、何かしらの痕跡というか、きっかけはあるはず。
「……たとえば、だけど、夜が明けたら、戻っていたりってどうかな」
ゴリさんは、太陽が出ている時にはもう存在していなかったと言っていた。つまり、夜が終わったら、戻る、という事はないだろうか。そうであれば、事は簡単だ。ゴリさんが帰ったあと、私はガラス戸を閉めて、寝て起きればいい。
「そうですね、その可能性は高いと思います」
「そっか、それなら」
そう、私が言いかけた時に、ゴリさんが、少し心配そうな顔をして、言った。
「そうなのですが、少し気がかりがあります」
「私が、三条夫人に最後に会った時に申し上げたのです。今、この辺境地は、魔物が跳梁跋扈を始めており、危険であると」
「魔物……って」
「あなた方の世界で言うところの、害獣、と、いいますか、危険な野生生物というところでしょうか、我々の同胞も、まれに襲われる事があるのです、……ですから、未夜子さん、あなたを夜明けまで、一人で残すのは、……不安です」
ううっ、それは、私も不安だ。
「えーっと、ゴリ、さん? もしよければ、朝まで一緒に」
そう、言いかけたところで、ゴリさんは真っ赤になっていた。ん? 私、何か変な事言った?
「未夜子さん、あなたは、独身でいらっしゃいますか?」
赤面したまま、ゴリさんはうつむいて、私と目を合わせないようにしている。
「はい、そうですけど……」
アラサーで、無職で、独身です。と、心の中で、私は続けた。
「……その、私の世界で、独身の女性が、男に対して『朝まで一緒に』というのは、同衾して欲しい、という、意味……です」
どうきん? どうきんって……、土曜と、金曜、じゃ、ないよね。ん? んんんん? 同衾って、つまり、それは……。
私の方も真っ赤になってしまった。同衾って、一緒のお布団に寝ましょってやつだよね?!
つまり、今私はゴリさんに一緒のお布団に寝ましょうって誘ったって、そういう意味?!
「いやいやいやいや!!!! 違います! わた、わたしの世界だと、アレです、朝まで一緒にっていうのは、オールでカラオケ、とか、麻雀とか、そういう、単に、同じ場所で夜明かしするって以上の意味はありません! 断じてッ!」
おお慌てで、若干呂律がまわらない感じで、私は一息に言った。
「すみません……私も、その、違うだろうな……とは、思ったのですが、あなたのように美しい方が、そのようにおっしゃるので、動揺してしまいました」
って、ゴリさん、今さらっとなんて言いましたか! うつくっ、美しいって、私が? ですか?
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