幕間 僕と俺
突然、電話が切れた。
いや、しごく真っ当な対応か。こんな僕の身の上話、一銭の得にもならない。
一旦台所に戻って、麦茶のおかわりをする。冷たい。一つ、風が吹いた。ちりぃん、ちりぃんと、ドラマみたいな音で風鈴が鳴る。
顔も名前も知らないが、もう一度、声を聞きたいと思った。無骨そうだけど、根はいい人だと思うから。不思議と、電話のある玄関口まで来てしまっていた。今すぐにもまた電話が鳴りそうな。そんな気がした。
電話ボックスから出る。柔らかな空気。久し振りの開放感だ。俺はそのまま隣のジュースの自動販売機へと歩を進める。
高校の先輩が言っていた。運命は自動販売機みたいなものだと。お金を入れる。そこまではいい。だが、買いたいジュースを選んだとき、運命は決する。ゴトンと落ちてくるジュースは、既に定められている。変更なんか出来ない。あれだけ有った可能性は、ゼロになる。
それはともかく、コーラにしようか少し迷って、アイスコーヒーのブラックを選んだ。缶が冷たい。
乾いた喉に染みる。暑さと会話で、喉がカラカラだった。あの相手も、相澤直也もそうだったのだろうか。
ふと、思う。このままで良いのかと。
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