俺、クラス転移に巻き込まれる

「……じ……ぶ」


何か声のようなものが聞こえてくる。


「……だ……じ……ぶ」


そうか、俺はもう異世界に転生したのか。


「だいじょうぶ?」


目を開ければ女の子が俺の顔を覗きこんでいた。

どうやら俺は立ったまま目をつぶっていたらしい。


良かった。

もし倒れていたら彼女の前で盛大に絶頂していたところだった。


「あなた見ない顔だけど、あなたもこの世界に転移させられたの?」


女の子は学生服を着ており、まるで元の世界の人間のようだ。

そして彼女が俺にそうたずねてくるが全く意味が分からない。


異世界「転生」ではないのか? それに『あなたも』とはどういうことなんだ?


見れば周りには彼女と同じ制服を着た男女がたくさんおり、そして俺達はどこかの室内にいるようだった。


「どういうこと? 転移? ちょっと言ってる意味が分からないんだけど……」


混乱して彼女に質問しようとする俺だが、その言葉が最後まで発されることはない。

突然俺達のいる空間に声が響き渡ったからだ。


「尾那穂高校3年3組の皆様はじめまして、そして異世界にようこそ。私はこの国の女王アナ・ルーと申します。突然この世界に呼び出してしまったこと、本当に申し訳ありません……ですがどうか私の話を聞いて欲しいのです」


その声が聞こえた方を向くと、そこにはドレスを着た若い女性が立っていた。

青い髪に金色の瞳という元の世界では考えられない容姿に(あぁ、本当に異世界に来ちゃったんだなぁ……)なんて場違いな事を考える。


「この国は今、危機に陥っています。魔族が軍勢を増やしこの国に攻めてこようとしているのです。このままではこの国は滅びてしまいます……。こちらの都合ばかりで申し訳ありません。ですが、どうか私達を助けてはいただけませんでしょうか? お願いいたします……」


そう言って女王様は頭を下げた。


……なるほど、どうやら俺はクラスごと転移してきたこの尾那穂高校の人達と一緒に異世界に転生してしまったようだ。

おまけみたいで凄く……居心地が悪いです。


「話は分かったんですが……でも僕達には戦う力なんてありませんよ」


クラス委員長っぽいメガネの人が言う。


確かに。

俺達には魔族と戦う力なんてない。

なのに何故、女王様は俺達をここに呼んだのだろうか。


俺が考えていると女王様がそれに答えた。


「心配にはおよびません。あなた方には私達異世界人にはない力があります。皆さん【Ω(オーガ)・ズーム】と唱えてください」


なんだそれは?


俺は疑念を抱いたが、周りはどんどんそれを唱えていく。


こうなりゃヤケだ!


俺も【Ω・ズーム】と唱えた。


「おぉっ!?」


すると目の前にゲームの画面のようなものが現れる。

ナニナニ……?


ーーーーーーーーーーーー


イキオ・イキスギ 18歳 レベル 0

性別:男

体力:1

攻撃:1

防御:1

魔攻:1

魔防:1

EP:0(レベル1まで残り1EP)


ーーーーーーーーーーーー


これはもしかすると「ステータス画面」みたいなものか。

……それにしてもヤバイくらい微妙なステータスだ。

まぁ、来たばかりだしみんなこんなモノでしょ。


俺はこれが当たり前なんだと思いながら、さっきの女の子のステータス画面を盗み見るも二度見する結果となった。


ーーーーーーーーーーー


スズネ・カワサキ 18歳 レベル 5

性別:女

体力:32

攻撃:29

防御:31

魔攻:28

魔防:30

EP:1(レベル6まで残り9EP)


ーーーーーーーーーーー


んー? おやおや? 俺のステータスと全く違うじゃないか。

これはどういうことなんだ?


そうして俺が自分のステータスとにらめっこしていると、女王様がこの画面について説明を始めた。


「皆さん目の前に画面が現れましたでしょうか? その画面は【Ω・ズーム】画面と言います。そしてそこに表示されているのは皆さんの今の強さです」


まぁ、そうだろうな。


「そしてその強さというのは皆さんの今までの、そしてこれからのレベルで決まります」


あーなんかそんなのあったね。


「レベル?」


メガネの人が再び女王様にたずねる。


「はい。それは皆さんが今までに絶頂して達したレベルとなります。レベルはEP(エクスタシーポイント)によって上昇し、一回絶頂するごとに1EPなのでレベルが高くなっていけば当然、次のレベルまで必要な絶頂の数が増加いたします」


彼女は恥ずかしげもなくそんなことを言うが俺にとっては驚愕の事実である。


な、何だってぇえええっ!? 俺今まで絶頂しまくりだったんですけどっ!!? どうして0ポイントなのっ!?


絶頂以外でこんなに腰を抜かすのは初経験だった。

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