#11
「んで、伊藤をやった奴がこん中に居んのかよ?」
ガッシリとした体型のサークル部員が、苛々してるのが分かる口調で万治に投げかけた。
「まぁまぁ、大岡、落ち着けって。ごめんな、九栖君。初めまして、このサークルの部長の田辺だ、宜しく」
大岡の方をポンと叩いて宥めた、田辺は万治の前まで歩み寄って握手を求めた。
「いえいえ、仕方ありません、こんな状況ですしね」
その差し出された手に万治は応えて握手をする。
「あ、最初に言いますが、この中に伊藤さんを線路に付き飛ばした犯人が居るかどうかの確証はありません。とりあえず、皆さんのお話を聞きたいと思いまして来ただけです」
万治はそう言うと手を離した。
その言葉を聞いて大岡はまた声をあげた。
「んなもん、警察に任せりゃいいじゃねーか。良く分かんねー奴がいきなり出て来る事じゃないだろ!」
万治はフッと息を吐いて、大岡に説明しようと思って声を発し様としたとき、隣に居たアヤメが大岡を睨みながら言った。
「さっきから何、お前? そんな苛々することでもあんの? お前が犯人なの? 事情も理解しようとしないで、突っかかってきて、馬鹿だろアンタ」
「あぁ!? んだ、この女!!」
「馬鹿に馬鹿と言ったまで。大体、さっき、入り口で伊藤さんから話聞いてないわけ? 警察は通り魔で処理すんだとよ。そうなれば、基本的に伊藤さんと川下さんへの事情聴取だけで、特にお前らに話なんて聞かねぇ可能性が高けぇだろ? んで、お前みたいに声を荒げて、さも俺がやりました雰囲気の奴がいんだから、目の前で殺されそうになったウチも万治も黙ってらんない訳」
「なんだと、テメー。俺がやったって言いてぇのか!?」
大岡は一歩足をだし、アヤメに詰め寄ろうとする。
それをギラギラとした眼光で睨むアヤメ。
ヤバイと直感した万治は、二人の間に入った。
「まぁまぁ落ち着いてよ。アンタが伊藤さんをやったかどうか、そこは置居といたとしても、今の現状は狼狽してるようにしか見えないと認識はないか?」
万治は大岡に対しニコッと笑い、他のサークルメンバー達を指差した。
怒っていた大岡の表情が、少し曇る。
「お、お前らまで俺がやったと思っているのか?」
大岡は他のサークルメンバーの猜疑心の眼差しを受けていた。
「ここで、もし投票で犯人が決まると言うのであれば、間違いなく大岡さん、あなたが犯人です。因みに僕の中の印象も大幅下落、これは追及の余地が有りそうだ。少なくとも白ではないね」
ククッっと笑い万治は大岡の顔を眺めて言った。
「まぁ話が少し逸れたけど、皆さん、パパッと自己紹介して頂いても宜しいですか?」
万治はサークルメンバーに手を差し出し自己紹介を促した。
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