秋葉原駅で突き落とし事件~解決編~

#10

 現在の時刻は十八時四十五分。場所は大学のサークル室である。

 贅沢にもタクシーを飛ばして教室入り。

 運が良い事に、まだサークルメンバーは誰も居なかった。


「フー、ラッキーだな。んじゃ、伊藤さん此処に立っていてね?」


 万治は教室のドアの前に伊藤を立たせる。

 何の変哲のない、平凡な教室。

 中学・高校などを連想させる、極々普通な教室だ。

 この教室のドアは引き戸になっており、今日室内から見て基本的には左側をスライドして空ける。


「はい………?」


 と、不思議そうに言われる通りに伊藤は右側のドアの前に立つ。

 その間に、教室後方のドアの鍵を万治は締めた。

 そして、約三分後位には続々とサークルメンバーが教室に集まり始めた。

 サークルメンバーは全部で六人。

 女子二人、男子四人で構成されているらしい。


「なんか居心地悪いな」


「まぁそう言いなさんな、アヤメさんや。誰だって見知らぬ奴が二人も居る、しかもドアを開けて直ぐに、朝は元気に自転車乗ってた伊藤さんが松葉杖突いてるんだもん、そりゃ驚くでしょ。こっちを一瞬、見ちゃうでしょ」


 万治とアヤメはその度に、軽い会釈をして居た。

 伊藤と川下は次々と入って来るサークルメンバーに、今日の経緯を短めに要点だけを伝えていた。

 駅のホームで突き飛ばされた事、万治達が助けてくれた事、ストーカー被害にあっている事。

 万治はその光景をフムフムと言った様に頷きながら眺めている。

 そして数分が経って全員が集まった。


「全員集まりましたね。初めまして、俺の名前は九栖と言います。こっちが助手の杜若君です」


「ども、初めまして。隣の変態調子コキ野郎に、四六時中、性的な眼差しを浴びせられている悲しき美女。単なる友人の杜若です」


 ジトッとした眼差しで、アヤメは頭をサークルメンバーに下げた。

 万治は心中で、これ後でアヤメに腹殴られるかアイス奢るテンションだなと思い、目を瞑って頷きアヤメの後に続いて頭を下げた。

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