第131話 2巡目…5

 ハイスクールでアメフトのスタープレイヤーとして活躍、そのまま流れる様にプロ入りした黒人の青年。

 恵まれた体躯、その容姿からプロでも1番の人気を誇っていた。


 ある日、所属チームの最大のスポンサーである、ARK財団から呼び出される。

 その身体能力を活かしてほしい。

 宇宙で…。


 青年は断った。

 高額の年俸、贅沢な暮らし、すでに資産は遊んで暮らしてもおつりがくるくらいの生活。

 それを全て手放して、何もない真っ暗な宇宙へ行け…なんのメリットも無い。

 考える余地すらない話だった。

 ところが、断った翌シーズンからのスタメンからは外され、ベンチすら入れない仕打ちを受ける。

 スポンサーの報復を恐れたチームの措置だった。


 青年は、チームを辞め、田舎のハイスクールでアメフトのコーチに就任する。

 薄給でも良かった。

 お金は不自由しないのだから、ただアメフトには未練が残った。


 ある日、ベンチの隅で、練習を見ている少年に声を掛けた。

 いつも見ているだけだ、キミもやらないかと。

 少年は首を横に振った。

 自分は身体が弱く、激しい運動はできないのだと。

 でもアメフトは好きで、コーチのファンだったと。


 なぜ、アメフトを辞めたのか?

 少年に質問されたが、答えられなかった。


 少年の夢、それは宇宙のことを知る事…まだ誰も知らない星を見つけること。

 宇宙人を見たい。


 青年は、それから生涯で3度宇宙へ行った。

 青年が年老いて挑んだ最後のミッション…管制塔では、あの時の少年が見守っていた。


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