第130話 2巡目…9

 地方の小さな病院でその子供は産まれた。

 その容姿は醜く、子供が少年となる頃には、その容姿を嘆いた両親が、少年を家から出すことはなくなった。

 子どもが再び外の世界を見たのは、14歳の頃、監禁されていた少年は言葉すらロクに話せなかった。


 警察に保護され、孤児院に預けられた子供は、そこで自分の容姿の醜さを知ることになる。

 他の孤児たちと違い遊びに誘われても、彼は独りでいることを好んだ。

 自室から出ようとせず、ただ窓の外を眺めて暮らした。

 今までそうしていたように。


 窓の外に、ボロボロの車いすで落ち葉を掃除する少女がいた。

 不器用に身体を曲げ、ホウキで落ち葉を集める。

 時折吹く風が集めた落ち葉を撒き散らすと、またホウキで集め直す。

 ある日、少女のホウキを他の子供が、わざと折ってしまう。

 車いすの少女をからかったのだ。

 見兼ねた少年は、窓から飛び出し、子供を殴りつけた。

 施設の大人たちは、少年を責めたが、少女だけは少年を庇い続けた。


 いつしか少年は少女の車いすを押し、少女は少年に言葉や文字を教えた。


 成長した少年は、小学校の教師となり、度々孤児院を訪れては、子供たちに無償で勉強を教えている。


 彼が市長から名誉市民と表彰されるのは、まだ少し先の話。

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