殺しの調べ

蛇足

第128話 2巡目…23

「勝てばチャンピオンだな」

「あぁ…ここまで来た…早かったかな」

「早いさ、そして運もある」

　総合格闘技、全米注目の一戦に向かう、若きチャレンジャー。

　ボクシングから始めて通算23戦目にして掴んだ挑戦権。

　一度は病に倒れ、再起不能と言われた天才格闘家。

　復帰戦から破竹の勢いで駆け上がってきた。

　再起ロード。

　中華街の貧民が暮らす孤児だった…。

　繁華街を歩く男の財布を擦って捕まった。

　擦られた男は、ボクシングの名伯楽として活躍した老人。

　奇妙な出会い、孤児の才能を見出し、ボクシングを教えた。

　チャンピオン確実と言われた試合を目前に控えたある日、筋肉が硬直する病が発症した。

　治癒不可能な奇病。

　ボクシングを諦め、世間から忘れ去られた。

　4年後…男は綜合格闘技のリングに立っていた。

　奇病の治療に当たったのはARK財団。

　研究を前提とした治験の結果、完治したのだ。

　だがボクシング界は、彼の復帰を認めなかった。

　だから、総合格闘技に転身し、今、リングに立つ。

　ボクシングトレーナーにとって23人目の息子。

　始めて、ボクシング以外のリングへ送り出した。