第126話 虹勇苦 にじゅうく

「だから…僕が行く、どうせ、長くは無いんだ、だから外に出てみたんだから」

No80ハチマル…」

 亜紀人が差し伸べられたNo80ハチマルの手を取り立ち上がる。

 無言で頷くNo80ハチマル

「良かったよ、面白かった。最後にRPGのキャラになれたみたいで」

「そうか…アクションは苦手だったもんな」

「まともに走れてませんでしたよ」

 サクラが笑いながら立ち上がる。

「そうね…オカマ走りだったわ」

 彩矢子も立ち上がる。


「なんか嫌だよ~サンドイッチくん…サヨナラみたいで嫌だよ~」

 ナミだけが立ち上がろうとしない。


「うん、楽しかった。亜紀人…もし2巡目を選ぶのなら…いや、なんでもない」

「あぁ…解っている…もし選んだら、オマエを普通に走れるようにくらいはしてやるよ」

 No80ハチマルが黙って、コントロールルームへ向かう。


 通路が小刻みに振動している。

 YAMAはベーキングパウダーを固まらせないために振動を誘発しているのだ。


 4人が扉に張り付く。

 コントロールルームに着いたNo80ハチマルがスイッチの前に立つ。


『やはりそうするか?』

「あぁ、その役目は僕だ」

『誰が来るかと思っていたが…結果を見れば当然か』

「YAMA、最後の審判だ」

『そうだな…我をマザーごと封じるか』

「特異点を逃がして2巡目を迎えるか」

『2巡目か…我の存在は消えぬぞ』

「そうだな、だが1巡目で特異点を潰させるわけにもいかない、オマエのような、ただの奴隷あがりのリベンジャーに」

『では…いざ…尋常に…』

「…勝負!!」


 ボロボロだよね…。


「泥だらけだよね…ヒドイよね」

 地面に前のめりに倒れたままのナミが呟く。

「土をこんな距離で見ることなかなか無いよ…」


 亜紀人はしゃがみこんで、ゲルが流れ出した倉庫を見ている。

「彩矢子、どうるんだ?」

「倉庫はさらに、補強して完全に電力を遮断するわ、いくらなんでも電力無ければ何もできないでしょ…冷蔵庫、電力無ければ、ただの箱…よ」

「そういうセンスはないのですね…彩矢子さまは」

「ハナコだもん」

 ナミがバカにする。

 ナミの手をわざと踏んで亜紀人の隣に立つ彩矢子。

「痛いー!! ハナコが踏んだよー!! ユキヤ~ハナコがナミの手踏んだー」



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