第124話 虹友志知 にじゅうしち

 ナミの突き刺した杖が、バチバチと小さな音を立てている。

『その杖は我の杖だな…ナミ』

「あっ、そうそう~持ってきたよ~、ちょっと欠けちゃったけど…」

 引きずり回し、振り回し、投げつけて…先端がちょっと欠けた杖。

「刺さっちゃったし…ゴメンね…大事な物じゃないよね…どうでもいいとか言ってたしね、ねっ」

 ナミが杖に触れた瞬間、No0ナンバーゼロがビクンと動く。

「えっ?なんかスイッチ入った?…いやらしく動いてる、コレ電動?」


 驚いたのはナミだけじゃない…誰より驚いたいたのはYAMAだった。

『なぜだ…我の記憶ではない…』


「起動した…アクセスできた…」

 No80ハチマルがサクラを見る。

 無言で頷くサクラ。

 外壁は40cmほどの穴を空けていた。

「充分だ…」

 穴にヴァジュラを差し込んで、目を閉じる。

「僕だって…神の子の血を引いているんだ…起動しろ神具ヴァジュラ…」


 ヴァジュラはパチッと音を立てて、蒼い稲妻を纏い、ビシャーンという耳を劈く音と共に一気にマザーに雷を放った。

 マザー内部に強力な雷が走る。

『………』

 マザーが沈黙する。

 シュッとマザーに青い光が灯り、再起動が掛かる。

「さて…出てくるのはYAMAか…マザーか…」

 ブゥーン…ブゥーンと唸る音が室内に響く。

『私の子供…No42フォウツゥ…?…ユキヤ…亜紀人…』

「マザーだ…」

 No80ハチマルが安堵から膝から床に崩れた。

 サクラはまだ警戒を解いていない。

「姉さん…なの?」

『ハナコ…ね』

「ハナコ?」

 ナミがプッと吹き出す。

「ダセー本名!! なにがアヤコよ源氏名?本名ハナコー」

 ピシピシとNo0ナンバーゼロを叩いて喜ぶナミ。

『逃げなさい!! 事態は理解してます。YAMAは消去できない。リブートが掛かるまでの数分の間だけ私がYAMYを抑えてるにすぎない。急いで倉庫を破棄しなさい。出口は開けてある、あなた達が出たら、この部屋から順にベーイキングパウダーを流す、だから走…れ!!…る…な?…まだ…終わ…ら…んぞ』


 サクラが彩矢子の手を取って走り、亜紀人がナミの手を取る。

 一番マザーの近くにいたNo80ハチマルが少し遅れて4人に続く。




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