第121話 似自由死 にじゅうし

『それが不都合になるのか?むしろ、ゆえに我はココに在る』

「ゆえにオマエはマザーの上書きに失敗した、なぜ僕達にチャンスを与えた?なぜわざわざ己の脆弱性を突く遺物を僕達に選ばせた?」

『我は常にチャンスを与えてきた、罪と罰を天秤で測るだけなら法だけでよい。そこに試練を与え、懺悔と挽回の機会を与えてきた、今回もその例に従っただけ、我は公平なる審判者だ』

「そうだ、そのためのYAMYなんだ、別人格の示唆を結婚となぞらえた古代人は賢い…オマエはただの伝承の変化にしか捉えなかったのだろうがな」

『それが事実だとして、マザーの支配に影響はない』

「ある、オマエは間違えた。女は女に…学者には奴隷で…母には男で当たるべき

 だったんだ」

『母には男?』

「そうだ…父にはなれなかった…もちろん母にはなれないのだから、まぁどう当たってもマザーには勝てないんだよオマエ」

『今からでも遅くは無い』

「いいや…無理だ、マザーの人格は、そんなに柔じゃない」


「そうよ、姉さんなのよ、あの中にいるのは」

「彩矢子さま?」

「サクラ…姉さんは、キツイ性格だったわ…正直怖かった」

「彩矢子さま?」

「あの姉さんが、簡単に男に組み敷かれるはずはない」

「まぁ…言いたいのはそういうことかもしれませんが…」

「少しちがうんだろうな…たぶん」

 亜紀人が彩矢子を見て溜息を吐いた。


「サクラ!! 音響兵器でマザーの外壁を破壊しろ、彩矢子とNo42フォウツゥNo0ナンバーゼロからマザーにアクセス、彩矢子はプログラム『ワイズマン』に、No42フォウツゥはプログラム『バース』へだ、急げ!!」


 弾かれたように亜紀人が部屋に飛び込む。

 続いて彩矢子とサクラが室内へ入る。


 No80ハチマルはすれ違いざまに亜紀人からヴァジュラを受け取る。

(そう…コレが僕の役目だ)

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