第120話 二次有産 にじゅうさん

『解らぬな…ただの呼び間違いか、あるいは仇名か…そんなところであろう』

「オマエは他人を視るに長けていたが、自分を疎かにしたな…YAMYとはオマエ自身だ」

『そうだと言っている』

「違う、オマエには、べつの人格が移植されているんだよYAMA」

『バカなことを…意味が無い』

「意味はある。その人格無くして、審判は下せないのだからな」

『審判は我が下すのだ、YAMYなどという存在はない』

「マザーは、No42フォウツゥの母親の人格を移植してある、最初に『女』、次に『学者』、最後に『母』としての人格を分離させ移植した」

『もちろん知っておる』

「マザーの支配は、3つの人格の支配に他ならない」

『そうだ、我の支配下にある』

「女は男、学者は審判としてのオマエの人格に上書きされた…」

『そうだ…』

「では母は?」

『同じこと、我の支配下にある』

「無い!! オマエは父親にはなっていない」

『個別に上書きしたわけではない、その3つのマザーを統合してYAMAに書き換えたのだ』

「いいや…マザーは決して相容れない。だから、世界で唯一のせめぎ合い続ける思考型コンピューターなんだ」

『統合は無いと?では、なぜ我はYAMAとして貴様と会話しているのだ?』

「それが、もうひとつの人格の証明であり…欠落なんだよYAMA、母親のマザーを抑えているのは、女であるYAMYだ」

『仮に貴様のいう我の自覚できない人格YAMYなるものがあったとしよう、それが機能し、マザーを支配しているのだから、我に不都合はない』

「言っただろ、欠陥なんだ…オマエのな。いいかYAMYに女の身体を与えずに人格を移植したわけは、オマエの中に矛盾を孕ませるためなんだ、結局、天上人もマザーと同じ理屈で、裁く者を創造したんだ…男・奴隷・そして女という3つの人格を」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る