第119話 二次悠宇荷 にじゅうに

『我の知らない我のこと…だと?』

「そうだ」


 扉の陰から中の様子を伺う彩矢子。

「ちょっと…なんなの、あの自信?」

「どうかしたのでしょうか?」

「ねぇ~」

「変なフラグじゃないといいけどな…」


「YAMA、お前はマザーを支配したと思っているだろ、違う…抑えられているだけだ」

『同じことだろう』

「違う、オマエはマザーを支配していない」

『何が言いたいのだ?キリストのレプリカが』

「オマエには自分でも自覚していない人格が存在している」

『何のことだ?我はYAMA…ヒトに裁きを下すもの、それ以外の何者でもない』

「オマエの他のクローンはなぜ、モノリスに刻まれなかったか解るか?」

『なんのことだ…他はただの支配者に留まったからではないか、もしくは、未来へ繋げるのは1人いればいいからではないか』

「なぜオマエだった?」

『結果だ…それ以上でも以下でもない、それに誰でも同じだ、その全てが我だ、身体を捨てれば、誰でも同じだ』

「違う…オマエは自分が他と違う個体だと自覚できていない」

『他と区別されたのであれば、なんだ?それが欠陥とは思えぬが』

「いいや…オマエだけがYAMAなんだ…他はYAMAにはなれない欠陥品だった」

『貴様の言うことが、我の弱点とは思えないのだが…』


「まったくよね…あの子…何考えてるのかしら?」

「アレじゃないでしょうか」

「なによサクラ」

「そうですよ、ゴマ擦って、油断を誘うつもりなんですよ」

「だとしたら…サクラ」

「だとしたら?なんです彩矢子さま」

「だとしたら、あの子…バカだわ」

 扉の陰ではサクラと彩矢子がNo80ハチマルに絶望の視線を送っていた。


「オマエ、YAMYヤミーを知っているか?」

『YAMY…ときに我をそう呼ぶヒトもいたが…それがなんだ』

「なぜYAMAと崇められたオマエをYAMYと呼んだか解らないのか?」

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