第118話 尼寺勇意値 にじゅういち

「亜紀人…これを」

 両手に見慣れぬ自動小銃のような武器を抱えた彩矢子も合流した。

「冗談じゃないわよ…学者のやることではないわ…」

 何があったかは知らないが、苦労と疲労だけは伝わる。

「他人にやらせることだったか?叔母さん」

「たまにはいいわよ…自分の手で触れるのもね、意外と器用だと言うことも解ったわ」

「汗をかくんだな、汗をかかない人だと思ってたよ」

「ただの人なのよアタシはアナタと違うの」

「僕だって…ただの人さ」

「亜紀人?」

「ただの人だ、僕も…あんたも」

「そう…それが行き着いた答えなのね」

「あぁ」

「それでいいのかもしれない、でも…今は、信じなさい。自分にしか出来ないと信じなさい。そして出来て当然と疑わないこと。でないとアタシの汗が無駄になる」

「解った」

 深く頷く亜紀人。


「そうだNo42フォウツゥ…僕達がココを出るには、キミがただの人では困るんだ」

 No80ハチマルが通路の角から姿を現す。

「なによ?アンタ?手ぶら?」

 彩矢子が呆れたように言い放つ。

「彩矢子…汗を流すだけが労働ではないのだよ」

「アタシがどれだけの苦労をしたか、じっくり聞かせてあげるわよ。後でね」

「そうだ、全ては終わってからだ」

「あぁそうだな…終わらせよう」

「はい」

 4人が顔を見合わせてフッと笑う。

「ところでシレッと仲間面してるけど…アンタなにか役に立つんでしょうね?」

 彩矢子がNo80ハチマルを疑わしい眼で見る。

「もちろんだ、僕が持ってきたのは…知恵の実だ」

「はぁ?」

 彩矢子の顔が呆れた表情に変わる。

「まぁ任せたまえ」

 そう言うと、スタスタと扉をまたいでマザーの前に立つNo80ハチマル

「やぁYAMA」

『自信あり気だなNo80ハチマル

「自信の理由を聞きたいか?」

『べつに…興味は無い』

「オマエも知らない、オマエの話だが興味はないか?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る