第104話 死地 しち
彩矢子は西側の倉庫に向かった。
扉は解放されていたが、一応閉じ込められない様に操作盤を拳銃で破壊した。
手動で開閉できることを確認してから中へ入る。
「西側倉庫、用途不明の品が収められているはず…」
彩矢子には探すべき遺物がある。
「ここに保管されているはず…」
彼女が探しているものは増幅器だ。
小さな振動を数分で高速に変換し破壊する音叉のような異物があった。
大型化に失敗して結果、破棄され施設のレンジのほうが処理用に使われた。
あの音叉は、破壊面積こそ小さいが、対象物を、あっという間に砂に変える破壊力だけは抜群の音響兵器、あるいは土木器具と推察した。
「ウソでしょ…」
彩矢子の視線の先で何本かのワイヤーで固定されているはずの40cmほどの音叉。
少しでも振動を与えれば、自身の身すら危ない代物。
そのメインパーツである音叉本体がワイヤー1本でぶら下がっている。
その位置は床に触れるか否かのキワドイ位置でピタッと固定されているのだ。
安全装置でもある他の部品は棚に保管されている。
メインパーツの音叉は、ワイヤーで振動を抑えつけてないと組立すら危うい代物。
「まさか自分で触る日が来るとはね…」
固定の際、何人が砂に変わったことだったか…。
「これを選ぶと見抜かれていたということね」
YAMAの嫌がらせであることを確信していた。
でなければ、ワイヤーを外すことすら困難なはずだから。
「性格が悪いようね…閻魔さまは…」
万が一にも、振動を音叉に伝えてはならない。
触れずに固定して…組み立てる。
「そもそも制限時間ってどのくらいなのよ」
真空状態を作り出さなければならない。
「ドアを壊したの失敗だったわ…」
汗の1滴でセンサーが反応する、そんなスパイ映画があったわね、私はスパイじゃないんだけど、状況は似ているわ…。
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