第102話 護 ご

 サクラは、北側の倉庫へ向かった。

 此処には武器と思しき遺物が保管されている。

 リストの閲覧はできない。

 すでにYAMAがプロテクトをけ掛けているはずだ、でなければ、リストを書き換えている、いずれにしてもトラップが仕掛けられていると思っていいだろう。

 YAMAは直接手を下すような殺し方はしない。

 閻魔の由縁なのだろうか、試すという概念を持っているように感じた。

 でなければ、ただのサディストかもしれない。


 ここは一番、直接破壊に結びつく遺物がある。

 サクラがココを選んだのは、自己犠牲の覚悟。

 探しさえすれば、後は亜紀人達の誰かが引き継げる。

 それには最初に武器を試さなければならない、これぞという武器を探さなくてはならない。

 発動条件が命と引き換えであっても、自分が犠牲になればいい。

 サクラは施設以外のことは知らない。

 興味も無い、自分はNOAを守り、死んでいけばいい。

 そのための命。

 亜紀人のためであれば本望だ。

(ナミとは…もう少し一緒にいたかった…)

 自分とは違うが、幸せとは言えない環境に身を置く女性。

 羨ましくは無いが、惹かれるものはあった。

 幸せになってほしいと思える女性。


 思い出が頭を駆け巡り、気持ちは焦る。

 所詮はコンピューターなのだ、水・電気には弱いはずだ。

 当然、処理は施してある。

 No80ハチマル自慢のマザー、並大抵のことでシャットダウンはしないだろう。

 ゆえのオーパーツ、ここならば何かあるはず。

(護るんだ)

 世界を…違う。

 亜紀人とナミを護る。


 めぼしい遺物を抱えて、部屋を出ようとするが扉が開かない。

「LOCKされたの!!」

 ビーッ…警告音が部屋に響く。

『この部屋から持ち出せる遺物はひとつ』

 部屋におかれたパソコンのモニターに文字が表示されている。

「クソッ…」

 チーッ…と四方の監視カメラの照準が自分に向けられる。

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