第100話 散 さん

「参ったわね…見込み違いにもほどがあるわ」

 彩矢子が溜息を吐く。

「マザーは外部と繋がっていないのが唯一の救いだ」

 No80ハチマルが少し落ち着きを取り戻している。

「そうだな、外部にアクセスできれば、今、この瞬間にも世界各地で核をぶっ放しそうだ」

「それに、マザー以外では覚醒しないだろう、マザーだからできたことだ」

「このウェアハウスで事は済む」

「廃棄は出来そうにないけど」

 彩矢子はすでに廃棄スイッチを押していた、だが内部はYAMAの支配下にあるようだ。

「押していたのか彩矢子」

 No80ハチマルが呆れたように彩矢子を見る。

「当たり前でしょ」

「押したらどうなるんだ?」

「爆破された後、特殊なベーキングパウダーで内部が満たされる、千年先まで手出しは出来ないだろうね」

「基本、保管が目的ですから、入るのは不可能、入れば自由ってのが、このウェアハウスの特徴ですね」

 サクラが見取り図を眺めながら話す。

「殺傷するような警備システムは無いし、ある程度は自由に動けるわね」

「結論は皆、同じなんだな」

「まぁそうなるよね」

「マザーの破壊が解決策ってことですね」

「まぁ…育ての親としては、複雑なんだけどね」

 No80ハチマルが少し不満気な顔をする。

『面白いな、お前達、いいだろう、ゲームと行こうか、制限時間内に我の新しい身体を破壊できるか否か、我は幾度でも蘇るからな…それくらいのチャンスは与えてもいいぞ』

「制限時間?」

『そうだ、我は空調設備も管理できる。空気を徐々に抜いていく、死ぬ気で来い』

「やはり歪んだ破壊者だな…封じたくもなるよ」

 亜紀人が溜息を吐く。

『それ以外にも、邪魔はするぞ…我は遊びたいのだ』

「余裕だなYAMA」

『お前達を見ていて解った、お前達は我が動けなくても自分達から寄ってくる…好奇心は止められない、それゆえに文明を繋いだのだろうしな、ヒトが臆病なら我は封じられたままだったさ』

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