第100話 散 さん
「参ったわね…見込み違いにもほどがあるわ」
彩矢子が溜息を吐く。
「マザーは外部と繋がっていないのが唯一の救いだ」
「そうだな、外部にアクセスできれば、今、この瞬間にも世界各地で核をぶっ放しそうだ」
「それに、マザー以外では覚醒しないだろう、マザーだからできたことだ」
「このウェアハウスで事は済む」
「廃棄は出来そうにないけど」
彩矢子はすでに廃棄スイッチを押していた、だが内部はYAMAの支配下にあるようだ。
「押していたのか彩矢子」
「当たり前でしょ」
「押したらどうなるんだ?」
「爆破された後、特殊なベーキングパウダーで内部が満たされる、千年先まで手出しは出来ないだろうね」
「基本、保管が目的ですから、入るのは不可能、入れば自由ってのが、このウェアハウスの特徴ですね」
サクラが見取り図を眺めながら話す。
「殺傷するような警備システムは無いし、ある程度は自由に動けるわね」
「結論は皆、同じなんだな」
「まぁそうなるよね」
「マザーの破壊が解決策ってことですね」
「まぁ…育ての親としては、複雑なんだけどね」
『面白いな、お前達、いいだろう、ゲームと行こうか、制限時間内に我の新しい身体を破壊できるか否か、我は幾度でも蘇るからな…それくらいのチャンスは与えてもいいぞ』
「制限時間?」
『そうだ、我は空調設備も管理できる。空気を徐々に抜いていく、死ぬ気で来い』
「やはり歪んだ破壊者だな…封じたくもなるよ」
亜紀人が溜息を吐く。
『それ以外にも、邪魔はするぞ…我は遊びたいのだ』
「余裕だなYAMA」
『お前達を見ていて解った、お前達は我が動けなくても自分達から寄ってくる…好奇心は止められない、それゆえに文明を繋いだのだろうしな、ヒトが臆病なら我は封じられたままだったさ』
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