第99話 児 に

『我のルーツか?知りたくば教えよう』

「別に…知りたくないわ」

 彩矢子が、ぶっきらぼうに言った。

「いや、知っておきたいね」

 亜紀人が彩矢子の口を手でふさぐ。

(時間稼ぎが必要だ…たかがコンピューター内に巣食っただけのプログラム人格、封じ込める手はある)

『よかろう…我は、ヒトとして産まれた、世襲制の王が支配する国で奴隷として産まれた、毎日、石を運ぶだけ、ある日、石に足を挟まれ動けなくなった、当然、捨てられた我は、腐っていく足を引きずって森を彷徨い、腐臭に群がる動物に襲われ命を諦めた、そこで記憶は途切れている…次の記憶は、無くなったはずの足があった。自分と同じ姿をした者が何人もいた、どれが自分か解らなくなり、最初は混乱したが、暮らしていくうちに気にならなくなった。色々な事を学んだ。世界が広く大地が丸いことを知った。自分がいる場所が空の遥か上だと知ったのは、しばらくしてからだ。我たちは、世界各地に降ろされ、散って行った。彼の地へ降りた我はソコが、昔追い出された地だと知った。我が渡された杖を天に振りかざすと稲妻を呼ぶ、神と崇められた我は、その地の王を裁き、彼の地を支配した。年老い、死の間際に、再び天上人が現れた。もう一度、生まれ変わりたいかと聞かれたので、もちろんと答えた。天上人は大きな石に何かを刻んだ、それが何か解らなかったが、それこそが我だと言われた。いずれ朽ちぬ身体を手に入れるだろうと言い残し彼らは去って行った。だが…民は、我の復活を拒んだようだな。破壊できぬ石を埋め、警告を残し、地獄の伝承を残したようだ、そして今、朽ちぬ身体を得た』


「宇宙人に造られたクローン…ってことか」

 No80ハチマルが思わず笑いながら呟いた。

「ユキヤ…宇宙人っていたの?」

「さぁね、神のレシピ?笑わせる、復讐鬼の設計図だったんだ」

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